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放課後 (講談社文庫)

放課後 (講談社文庫)

校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。先生を二人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将。犯人候補は続々登場する。そして、運動会の仮装行列で第二の殺人が…。乱歩賞受賞の青春推理。


東野圭吾作品を読了19冊目にして漸く手に取ったデビュー作。本書を作中の登場人物に例えるなら、優等生の顔を持ちながらも放課後にはバイクを乗りこなすような二面性を持つ高原陽子だろうか。読む人を選ばない文章に、ミステリとして非常に優秀な謎を含んだ殺人事件。また考え尽くされた全体の流れにも二重丸をあげたい。その一方で、多感な女子高生たちの天真爛漫な行動を描き、主人公の身には危険が降りかかる。そして赤裸々な真相と衝撃のラストが強烈なスパイス。この2つが絶妙なバランスで同居しているのが本書の魅力だろう。
鼻に付きながらもついつい目がいってしまうのが主人公の男性教師。この主人公、結構ヒドい男である。生徒から「マシン」と揶揄される程、私情を見せない。しかし決して嫌われているわけではなく、その冷静さから一部の生徒からは好意的なアプローチもされている。この辺りの性格設定は後の作品『俺は非情勤』の教師とかなり似ている。非情な振りをしていても、ついつい困っている自分の生徒には手を差し伸べてしまう性格。ただ、大きく違うのはアチラの教師はハードボイルドを気取ってるが根は心優しい人間に対して、コチラの教師はハードボイルドを気取っている自己中心的な勘違いバカであること(笑) どうもこの男、子供っぽい。彼が興味を持つのは自分自身の事だけ。自分の思惑と外れる事はことごとく切り捨てるような冷酷な人間である。まぁそういう男だからこそ、自分の身に降りかかる危険に思い当たる節が数々あるのだが…。天罰といえば天罰である。
淀みのない展開で最初から最期までグイグイと読ませる。特に中弛みしがちな中盤もセンセーショナルな事件を持ってくる事で読者を決して飽きさせない。また事件の真相も女子高という舞台に合っていたし内容も(ある意味で)衝撃的。真相披露の場面や1つ目の事件で使われた小道具、犯人の心理の変化を端的に示す出来事など、(→)事件とアーチェリーの絡ませ方(←)が上手かった。
本書はもう20年以上も前の作品('85年)。私立の女子高らしからぬ生徒数や、事件後の学校の対応に今との隔たりを感じる。殺人事件が起きた翌日に生徒を登校させるとは…。ただ、だからこそ当時にこの動機は衝撃的だっただろう、と思う。

放課後ほうかご   読了日:2007年12月14日