- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/06/15
- メディア: 文庫
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本年度日本推理作家協会賞受賞。現代「本格推理小説」の到達点! 受賞作「都市伝説パズル」を収録! 殺人事件の被害者が残した「=Y」の文字は果たして何を意味する!?あのクイーンの「Yの悲劇」への愛あるリスペクトに満ちたダイイング・メッセージものの白眉、「イコールYの悲劇」他、ロジカルかつアクロバットな推理が冴えわたる傑作ミステリ全5編を収録。法月綸太郎を超えるのは、やはり法月綸太郎でしかありえない!
久々の、のりりん。久々すぎて、のりりんの言い回しやまわりくどい論理(けれど正確)、硬質な文章、妙に衒学的な所もすっかり忘れていました。章を追うごとに段々、雰囲気が分かってきた。久方ぶりに会う親戚との空気みたいに。最後には穏やかに和やかに。長編でうだうだと悩む綸太郎よりも、実際に事件に体当たりしてる綸太郎の方がいいですね。綸太郎も大人になったってことかな。そろそろ親父さんも引退の時期なのでは、と考えたら今後の展開がどうなっていくのか、不安と期待。坊ちゃんは一人で事件を解決できるのか?
- 「イコールYの悲劇」…自宅に帰ると留守番を頼んだ妹が死んでいた。傍のメモには文字ではなく筆圧痕が「=Y」と読めるだけ。悩める探偵のりりん。今回は順調な推理展開。私は最初の推理でも正解じゃないかと思えるほど頷いてしまった。さすがに宅配業者のロゴは却下。ペンの謎・冒頭の話題、全てが美しく収斂された作品。動機は作品的にも後付けの感じですが。元はアンソロジー。有栖川さんの「あるYの悲劇」は読みました。Yだけで推理作家は色々考えるなと、感心です。
- 「中国蝸牛の謎」…推理作家としてデビューし、その後幅広い作風で人気を得た作家が上下逆さまになった部屋で死んでいた。作全体と作中の推理作家が次作のモチーフにしていた「カタツムリ」。薀蓄だけは不必要なまでに登場するのに解決にはその知識の一つもいらないという不出来な作品だと思う。モチーフ負け。
- 「都市伝説パズル」…まことしやかに流れている都市伝説をなぞらえるような事件が起きる。いったいそこにいたのは誰だったのか。日本推理作家協会賞受賞作。順序を正せば正解が見えるという、綺麗な推理だと思う(ネタバレ?)。都市伝説が考えれば考えるほど怖い。この話は知らずにいれたら幸せだったのに。
- 「ABCD包囲網」…自分は人を殺したと自首する男。しかし彼は明らかに嘘をついている。彼の真意は?これもアンソロジー。単純に上手いな、と思いました。法月さんは読者に一歩先を読ませるような書き方をしながらも、その一歩がミスリードによって導かれている一歩、という先導の仕方が上手いですね。
- 「縊心伝心」…愛人のもとに自殺する、と電話をした女性。後に女性の部屋から発見された死体には他殺の後があった。完全犯罪も夢ではなかったのに、そうしなかった理由にグッときました。ミステリにはこういう要素も大事です。