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法月綸太郎の新冒険 (講談社文庫)

法月綸太郎の新冒険 (講談社文庫)

名探偵・法月綸太郎が帰ってきた!著者会心の傑作鉄道ミステリー「背信の交点」、オカルトじたての怪事件「世界の神秘を解く男」、法月綸太郎本人が登場しない異色作「身投げ女のブルース」など、テーマと構成にこだわりぬいた中編を収録。本格推理の醍醐味が味わえる"知恵と工夫のエンタテインメント"。


法月綸太郎シリーズの特徴が今更ながら分かった気がします。それは、世俗にまみれているという事。名探偵が恋愛禁止なわけではありませんが、沢田穂波との付き合い方や、親父さんの威光を借りてしゃしゃり出る所などなど。どうも俗世間から隔絶された名探偵という訳ではないらしい。そこが「悩める」探偵の親近感に繋がるわけでもありますが。もう一つ、「身投げ女のブルース」で葛城警部が、法月ジュニア(綸太郎)は扱いが難しい変人、と噂されてるって言っていますが、まさにその通り。「身投げ〜」では綸太郎が話でしか登場しませんが、その方がスッキリしてる。変人は前面に出てはくどいのですよ(笑)。

  • 「イントロダクション」…世俗にまみれきった探偵だと思った章です。
  • 背信の交点」…夫は向かいのホームの電車を眺めながら服毒して死んだ。その電車には夫の愛人だという女性が服毒していた。乗り合わせた綸太郎の推理は?お互いの名字の電車で死ぬのは、ドラマチックだけど愛人と心中をするなら復讐とはいえこんな方法を取らない、と思う。古畑任三郎っぽい雰囲気かな。
  • 「世界の神秘を解く男」…サイキック能力を持つという噂の少女の家でTVの収録が行われた夜、その道の権威の教授がシャンデリアの下敷きになって死んだ。のりりん女優に会いたいがためにTV出演…この謎ものりりんが、全部全てマルッと何処までもお見通しだ!超常現象を信じる人ほど、自らその首を絞める典型。
  • 「身投げ女のブルース」…葛城警部が通りがかり見たビルの上から飛び降りようとしてる女性。葛城は女性を保護し理由を問いただすと、人を殺したというが…。『パズル崩壊』でも登場する葛城警部。『パズル』→本作を読むと驚きが倍増するかも。のりりんが現場をかき回すよりもグッと読みやすいのは気のせいだろうか?
  • 「現場から生中継」…大事件解決の現場からの生中継で携帯電話を使い自分をアピールしていた男。しかし同時刻、男の彼女が自室で殺されていた。一見、鉄壁のアリバイがありそうだが…やっぱり、のりりんがいると事件が二転三転。疫病神なのでは?(笑)モデルとなった事件の時は実際、生中継は酷いものでしたね。
  • 「リターン・ザ・ギフト」…ホステス殺害を企てた男が供述した交換殺人の計画。彼は、ある男に交換殺人を持ちかけられたと言うがその男は失踪していて…。理詰めで展開されているのでちょっと読むのが疲れるし、ついていけなかった。図書館も再び舞台になっていて沢田穂波も再登場。なくてもいい気もする。

法月綸太郎の新冒険のりづきりんたろうのしんぼうけん   読了日:2001年07月22日