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法月綸太郎の冒険 (講談社文庫)

法月綸太郎の冒険 (講談社文庫)

名探偵・法月綸太郎に挑戦するかのように起こる数々の難事件。なぜ死刑執行当日に死刑囚は殺されたのか、図書館の蔵書の冒頭を切り裂く犯人、男が恋人の肉を食べた理由など異様な謎に立ち向かい綸太郎の推理が冴えわたる。「ルーツ・オブ・法月綸太郎」ともいえるミステリの醍醐味あふれる第一短編集。


自らのポジションをいつも悩んでいる法月さんですが、この頃は純粋に論理で勝負してて、切れ味がいいなという感想です。短篇集って言うのも論理的な要因ですが。法月さんは様式美や構成に拘り過ぎだと思う。本人による解説で「誰々の焼き直し」とか「〜論を自分なりに書いてみた」とかが多いけれど、多くの人には(少なくとも私には)分からないのだから、ネタばらしせずに堂々としてればいいのに。
この本は後半は図書館シリーズ。綸太郎の彼女・司書の沢田穂波が登場。綸太郎と一緒にいるなんて物好き。絶対疲れるって。あのシニカルな感じがね…インテリ・バカップルとでも言いましょうか。この本も解説がなく、図書館の情報公開に関しての記述。私も凶悪犯罪発生時にビデオレンタル店などの貸し出し履歴は見れても、図書館の貸し出し記録の公開は禁止ってTVで見た覚えが。本の趣向はその人の趣向そのもの。このサイトは私の趣向がほぼ晒されてるってことか。

  • 「死刑囚パズル」…強盗強姦致死罪によって死刑が宣告された男の死刑が執行される日、拘置所内で男は毒殺された。死ぬはずの男をなぜ毒殺しなければならないのか?150ページ余りの中篇。ラストは鳥肌が立ったほど私は好きな話。拘置所または死刑執行の場という奇妙な空間に、巧みな構成と引用。特に最後の引用は謎が明かされてから重い意味を持ち、胸に迫るものがありました。良作です。
  • 「黒衣の家」…夫に先立たれて部屋にこもりきりだった母の食事に毒を盛られた 。果たして犯人の目的は?純粋だけど悲しく愚かな動機。やりきれない。珍しく綸太郎が気の利いた行動してる。トラブルメーカーって印象だったので。
  • カニバリズム小論」…綸太郎が友人に語る、同棲相手の死肉を食べていた男の話。彼は何を目的に行動したのか?怖がりの私には少々パンチの効きすぎた作品。扱うテーマのある短篇ミステリは事実の列挙が多いので退屈を感じる。
  • 「切り裂き魔」…図書館の世界各国の傑作ミステリが冒頭数ページを切り取られる事件が続発する。犯人は?目的は?図書館シリーズの始まり。読書中は東京創元社が頭に浮かんだ。あの会社の本にはほとんどありますからね、あれが。
  • 「緑の扉は危険」…開かずの扉の中の部屋で死んでいた本蒐集家の男。その緑の扉によって作られた密室の謎とは?ストレートな密室モノ。単純だけど実現可能な密室だと思う。森博嗣だったら数式を持ち出すだろう作品。
  • 「土曜日の本」…一冊の本(「五十円玉二十枚の謎」)にもなった、毎週、二十枚の五十円玉を千円に両替してくれと頼む男の行動の謎を解く。プロの作家として模範解答編を頼まれているのに、(面白いけれど)内輪ネタに徹したのはいかがなものか。他の解答もこれに引きずられてしまっているのは残念。
  • 「過ぎにし薔薇は……」…各地の図書館で3冊の本を胸に抱き、借りる女性。彼女の借りた本には薔薇の栞が挟まっている他は一見して異常はない…図書館シリーズに無理に絡めすぎていると思う。解決手段としてまどろっこし過ぎる。

法月綸太郎の冒険のりづきりんたろうのぼうけん   読了日:2001年06月15日