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人形幻戯 (講談社文庫)

人形幻戯 (講談社文庫)

巨大シャンデリアの落下事件は、“意図した超能力”による犯行か、あるいは“意図せぬ超能力”によるものか?極めて情緒的な動機を、精妙な論理で解き明かす表題作ほか、いつものメンバーに、神麻嗣子の属する「超能力者問題秘密対策委員会」の“上司”神余響子も加わって美女たちの推理が冴えまくる。


チョーモンイン第6弾は、またもや話は進展しない短篇集です。しかも今回は能解さんらの個別行動や、事件関係者からの別視点が多いので、いつものワイワイ・ガヤガヤの賑やかな場面も少ない。私は保科さんを囲む会話が楽しみだったので肩透かしをくらいました。残念。別視点も個別行動も登場人物一人一人を理解するのには楽しいんですけどね(フォロー?) 今回の短篇集は最後に思わせぶりな書下ろしがなくて安心。シリーズの伏線も今までほどには張られてません。けれど前作の最後の2編の話はどうなったのでしょうか?ちょっと、話の順番が分からなくなってきました。人間関係の設定がどこまでリセットされてるのか…。 私は阿呆さんが1作目で出てきた超能力を持つハイヒッパーで、彼女の力は強い(持続する)のかな?と推測してます。そしてアボくんの存在の有り無しで伝染したり、しなかったりなんじゃないか、と想像。実はアボくんがキーパーソン?(キーキャットか!?)
今回は(も?)超能力そのものより動機に焦点が当てられています。どうしてこの行動を取ったのか、という様々な人の心理が解明されてます。特に、今回は行き詰ってしまった人の「心の密室」の謎の解明が多いのでは?西澤さんお得意の心理状況からの推理なんですが、理解できるものと、ちょっと強引なものが混在していました。ちゃんと伏線となる描写があり、一つ一つ可能性を消去していき、その人物特有の性格設定を踏まえた、その人だからする行動ってのがあるので、論理としては分かるんですけど、動機としては疑問を持つものも幾つか。

  • 「不測の死体」…周囲に人のいない公園の中で、女性の頭に置時計が直撃し死亡した。突然、現れた時計は空から降ってきたとしか思えず…。話が進むごとに見えてくる風景が違ってくる面白い作品。考えると、ちょっと悲しい結末ですね。
  • 「墜落する思慕」…高校の中庭で男子生徒が宙に浮いているのが目撃される。が次の瞬間、彼は地面に墜落するのだった…。トリックは理路整然としてるんだけど、歪んだ心の動きは私には理解できないかな。で、阿呆さんの話はないの…?
  • 「おもいでの行方」…気が付くと彼女は2時間分の記憶と親友を失っていた。密室状態の部屋には彼女と親友の死体だけしかなく…。(予想はつくが)大きなどんでん返し。誰がどう能力を使っても3人の微妙なバランスは戻らなかっただろう。
  • 「彼女が輪廻を止める理由」…日々、頭に送り込まれる同僚が死んだ夜の光景。これは同僚の怨念が伝えているのだろうか…?動機の説明に一役買う傘のエピソードは上手いが、結局、分からなくもある。傘を盗まれた事の無い人っていますか?悲しい事に私はあります。これが人間の本質だとは思いたくないけど。
  • 「人形幻戯」…表題作。自分の「念」によって事故を引き起こしたと自覚する刑事は、複雑な心境で現場から平然と立ち去った女性を追う…。事故のきっかけは出来過ぎだが、「非日常」への渇望は私にも理解出来る、出来てしまう心理かも。
  • 「怨の駆動体」…超能力で閉じられた7階の扉の前から、なぜか別々の方法で階下に降りる男女。男性は平然と場を去り、女性は階段を踏み外して死んでしまう…。説明が難しい短編。だけど論理はバッチリ。純粋な心だったのになー。

人形幻戯にんぎょうげんぎ   読了日:2005年08月30日