
- 作者: 西澤保彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/06
- メディア: 文庫
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ワンマンで女好きの社長宅で開かれた新年会。招待された男二人と女二人は、気がつけば外に出ることが出来なくなっていた。電話も通じない奇妙な閉じられた空間で、社長の死体が発見される。前代未聞の密室の謎に挑戦する美少女・神麻嗣子たち。大人気「チョーモンイン」シリーズ長編第一作。
西澤さんの新シリーズは、なんと超能力本格ミステリ! 密室の鍵を念力で掛けちゃうようなミステリとは相反する超能力を使って起きる事件を、調査と推理で解決するという前代未聞のシリーズです。これは作者にとっては前例のないミステリを作る楽しみがあるだろうし、読者にすれば未体験のミステリを読める。ただ問題になるのは、前例がないからこそ、超能力の「ルール」を頭に叩き込まなければいけなくて、そこに多大なエネルギーを必要とすること。これを読者がしないと、作者の試みは一人相撲になりかねない。このシリーズでは現実の物理法則は通用しないので、この世界の常識・前提を学んで何ができて何ができないのか、という事を知っておかないと楽しみが半減する。だから全編通じて気の抜けないシリーズなのである。そのエネルギー消費に応えてくれるかは、西澤さんの腕次第。
うーん。確かに意外な犯人なんだけど、意外すぎて拍子抜けという感じがした。動機は置いておいても、トリックの解明も快刀乱麻を断つというよりも、重箱の隅をつつきました、という感じ。折角、自分でルールを作れる本格ミステリなのだから、誰もがアッと言うような盲点が欲しかった。確かに、この結末は盲点なんだけどさ…という感じがして、いまいちな印象が拭えない。久々の西澤作品は読みにくいですね。独特の語り口に、独特のキャラクタ。世界に入り込むとたまらないんだけど、読むのにエネルギーがいる。特に今回は、その上この世界の「ルール」を知らなきゃいけないし。何度も出てくる男女論は、女性に怒られないようにフォローを入れた男性の本音だろう。気を遣いすぎだし、理論を捏ね繰り回して食傷気味ではあるが、これがこのシリーズの展開に関わってくるんだろうと睨んでるので、伏線・情報としてインプットします。主役級の3人のキャラクタはわりかし普通で好感が持てるので、今後のアッというようなトリックと展開に期待です。