《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

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お帰りッ! 4人ともお変わりなくて安心したよ。お代わりッ!

身代わり (幻冬舎文庫)

身代わり (幻冬舎文庫)

ポルノまがいの小説『身代わり』を書いてトラブルを抱える成績優秀の美人女子高生が自宅で殺された。しかも現場には、一人の警察官の遺体が。一方、五日前の深夜、大学生が公園で女性を包丁で脅し暴行をしかけたが反撃され自分の腹部を刺して死亡。無関係に見えた二つの事件が高瀬千帆と匠千暁の名推理で交錯するとき、複雑な悪意の糸が解け出す。


身代わりッ! …じゃなくて、お帰りッ!と私もタックとタカチを、ぎゅうっと抱きしめたい気持ち。あっ、ボンちゃんも今回は出ずっぱりの主役お疲れ様。
本書は、あの、あの衝撃作『依存』から3週間が経過した8月後半の出来事を扱った作品。『依存』から2冊の短編集を挿んでいるが、どの短編も『依存』前か、ずっと後の話で、あの事件が彼らにどんな影響を及ぼしたのかは描かれていなかった。その答えが(『依存』では蚊帳の外だったボンちゃん目線なので間接的だが)ここにある。9年待ったけど、ありがとう西澤さん。抱きしめてあげてる☆
私の関心の比重はタックたちの動向に大きく占められていましたが、本書は4人のその後よりもミステリ部分に大きな比重が占められていた(まぁ当たり前か)。ミステリとしては非常に密度の濃い作品。冒頭の事件発生から最後の1ページまで読み逃す箇所はどこにも無い。シリーズの人気が登場人物たちの人気・関係性だけに依存していない、ミステリとしての面白さも思い出させてもくれた。
西澤作品の味わいは独特だ。事件の概要だけは分かっているが、前提条件が作中で何度も変わる。一見単純に見える事件でも、その犯行に物理的・心理的な引っ掛かりを感じて事件は再構成され、謎が更に混迷を深めるという構成になっている。証明間近だった数式に、判明した一つの事実を代入していくと様々な齟齬が生じ、解は変化し、最後には数式の存在自体までが疑問視される。
西澤作品を読むと、最近の自分の意識的・無意識的な言動に、自分の傲慢さや卑屈さがあったのではないか、と振り返りヒヤリとさせられる。特に本シリーズは事件関係者の性格的な特徴から、その人物の行動を確定していく方法が採られている。それは主に人の陰の部分で、関係者の歪んだ性格が事件の全貌解明の一要素として勘案される。本書でも関係者(主に加害者と被害者)の性格分析の結果によって、事件の見え方が大きく変貌していく。
お帰りッ!なのは主役たちだけではない。シリーズの在り方も元の姿に戻りつつあった。シリーズが進むごとにテーマは深化したが、同時に息苦しさも増加し、初期のお気楽な酩酊推理は失われつつあった。本書は、読者にも登場人物にも重い十字架を背負わせてしまった(だからこそ面白かった)『依存』からの「リハビリ」的な位置付けかな。ラストではまた無責任な酩酊推理が再び楽しめそうな予感がした。衝撃的な展開も読みたいが、このまま平和に…、という二律背反のファン心理。確かなのは私は続編をいつでも待ってるという事。ご褒美は抱擁☆
いいなぁ、と思ったのはシリーズの影の主役でもあるお酒の使い方。最初はボンちゃん一人酒だが、彼ら4人は再びお酒を通して、その関係を回復していく…。

身代わりみがわり   読了日:2009年11月12日