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彼女が死んだ夜 (角川文庫)

彼女が死んだ夜 (角川文庫)

門限はなんと六時!恐怖の厳格教育で育てられた箱入り娘の女子大生、通称ハコちゃんこと浜口美緒がやっと勝ち取ったアメリカ旅行。両親がたまたま留守にして、キャンパスの仲間たちが壮行会を開いてくれた出発前夜、家に帰ると部屋に見知らぬ女性が倒れていて…。撲殺らしい頭部の血。パンティストッキングに詰められた長い髪束。テーブルの下の指輪…。助けを求められた男性陣がかけつけると、ハコちゃんは自分の喉にナイフをつきつけて言った。この死体を捨ててきてくれなければ、わたしは死ぬゥ!しかしとんだ難題の処理が大事件に発展して…。通称タックこと匠千暁がすべての真相を説き明かした時、夏休み明けの学園にはもう、あのひとの姿はない…。


読み返してみて初期の西澤作品は読む人を選ぶな、と改めて思った。このタックシリーズもそれ以外の特殊条件下の作品も入り込みにくい。一度はまると、あぁこれが西澤節だ、と思うんですが。展開や設定がありえない、と肌に合わない人も多かろう。粘度が高いというか、濃密過ぎて息苦しいというか。私は好きですけどね。あと大事なのはウサコ初登場。後に、シリーズに欠かせない人物になるとはこの時は思いませんでした。今となってはウサコがストーリーテラーが普通ですが、今作はタックの語り。ある意味で貴重。タックが見る登場人物の印象はとても面白い。
ミステリの感想としては前提条件が曖昧なのはフェアじゃないな、と。驚く箇所でもあるんでしょうが純粋な推理を組み立てる、というより作中でタカチがタックに言う通り、ただの妄想と変わらない。私は特別に本格推理が好きなわけではありませんが、もうちょっと土台のしっかりした作品がよかったな。どんどん明かされる真相も、後付けの感が出てしまうんですよね。今までのは何だったの?って。それはキャラクタも同じ事かも。誰にも少しばかりは裏があるものですが、ここまで変わると納得の域からは逸脱してると思います。もしかしたら、悲しい結末が私をここまで批判的にさせるのかもしれませんが。

彼女が死んだ夜かのじょがしんだよる   読了日:2001年01月11日