- 作者: 津原泰水
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2001/03/01
- メディア: 単行本
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冷凍庫のなかの子供の屍体を見つめる初老の男。ふと脳裡に泛んだこのひとつの情景が、物語を隅隅に至るまで確定してしまいました。男はインポテンツであらねばなりませんし、好きな音楽はチャイコフスキーであらねばなりません。男は公務員です。おそらくは大公園の管理人です。そして屍体である子供の正体を、彼はさっぱりとわからずにいます。さまざまな時制を飛び交いながら、物語は多元的に収束していきます。果てしない推理小説でもあるし、もの悲しいポルノグラフィでもあります。
グルグルな小説。読んでいて思ったのは「中年の妄想を描いた舞城王太郎」(舞城さん未読の方には通じないけど)。それも『阿修羅ガール』の舞城さん。「阿修羅ガール」も突然、場面が転換したりで、ついていけない部分があったが、今回は2倍増し。空白無しの妄想突入・終了は読んでいる人を不快にさせるとしか思えない!それは狙いかもしれないれど、混乱と挫折。よく読んだと自分で不思議です。しかし不快感を催しながらも、気になってしょうがない展開。
私は読み手としては、深読みのできない単純な人間なので、 「物語は多元的に収束」したのかどうかも、分からなかった‥。「果てしない推理小説」の意味も、「今まで見たことがないような推理小説」ではなくて「推理の果てがない小説」という意味だった‥幻想小説というジャンルなんだろうか?私は、主人公が殺した少年の屍体を隠匿するという内容だと思っていたのに、ホントにただ少年の屍体と暮らす、という予想外の展開。そして過剰な性描写。この50の男の心理というのは私には、作中でいうところの「星座」であり「象の墓場」なのか。
ただ、主人公が殺してないから見出される、少年の屍体への感覚「永遠の所有」という観念は好きでした。部分部分好きなところもあったのですが、全体の異様さに圧倒されて評価は、まさに不能。分からない部分が多かった。