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カレーライフ (集英社文庫)

カレーライフ (集英社文庫)

人は死ぬものなのだと知ったのは、カレーライスを食べた後だった。その死が僕とカレーを結びつけ、もう一つの死が僕の背中を押した。長く奇妙なその旅に、僕の平穏な生活は丸ごとのみ込まれていった。それでも僕は、カレーライスが大好きだ。カレーライスを作る時、無闇やたらと幸せな気分になることがある。僕らみんなが、何か大きなものに包まれているような気がするのだ。史上初、大盛カレー小説!富士・米国・印度・琉球を縦横無尽、ボリューム満点1300枚。


世の中には泣けなくても「幸せな気分になれる本」というのが存在する。この本がそうだ。長い物語のラストの章、その1シーン1シーンが胸に迫り、心が弾む。彼らの前途が明るいものでありますように、そう願って本を閉じる瞬間、こちら側も幸せな気分になる。そういう読書はとても気持ちが良い。
幸せな気分になれる食べ物・カレーを巡る物語は1杯の特別なカレーで始まる。洋食屋を営んでいた祖父の作る特製カレーだ。この長いカレー物語は縦横無尽に展開しているようにも見えるが、実は祖父のカレーに終始しているという構成が心憎い。祖父のカレーを一緒に食べたいとこ5人がみんなでカレー屋をやろう、と約束することから物語は始まり、そのいとこに会うために国内外を四方八方に駆け回り、飛び回る。そして、それは同時に祖父のカレーのルーツを知る旅にもなっていく。戦争体験や戦後の冒険を経て生まれた祖父だけのオリジナルカレー。祖父の死後、一度は分断してしまったそのカレーは、孫達の舌と行動力によって甦る。RPGのようなカレーを巡る冒険を基礎に「黄金伝説」や祖父・子・孫それぞれの物語と、未来を自分の手で切り開く青春のスパイスを加えることで、小説として奥深く、飽きさせない味を完成させている。竹内さんのマジックタッチである。
この本はカレー小説であって、ミステリでも青春小説でもないのだが、ある人の隠された秘密が明かされる段で、そのはるか前に伏線が存在したことに一番驚かされた。あの話がこの話に繋がるなんて、という驚きは爽快。他にも少しずつ話がリンクしていて、目的に向かって前進しているという感覚がスムーズに話を次のステージに進め、物語をとても読みやすくしている。長い話だけど、あっという間に平らげられる。だって僕らはカレーが大好きなんだもの!

カレーライフ   読了日:2006年07月13日