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ガーデン (創元推理文庫)

ガーデン (創元推理文庫)

小函を抱えて今泉探偵事務所を訪れた奥田真波は「火夜が帰ってこないんです」と訴える。燃える火に夜、人を魅惑せずにはいない謎めいた娘だ。函の中身を見て只事ではないと諒解した今泉は、助手・山本公彦と共に火夜の行方を追う。やがて探偵は、死を招き寄せるあやかしの庭へ…。周到な伏線と丹念に組み立てられた物語世界、目の離せない場面展開がこたえられない傑作ミステリ。


今泉文吾最初の事件。この作品では小菊が出てきません。ここでは彼が大学の職を捨てて探偵になるきかっけまで書いてあります。私はそれが一番驚いたし、面白かった。「ねむりねずみ」と「散りしかたみに」と読み進めていたので、今までの大前提が崩された感じ。こういう衝撃がミステリには大事ですよね。今泉さんのキャラクタは変わってないのに、周りが違うと世界も変わるのかと驚きます。火夜という人物は好きにはなれなかったですが、この物語を動かす重要な人物です。人を愛するという不確かなものを不器用な方法でしかできない人。決して理解はできないはずなのに、近藤さんが描くとどうもアリになるし、共感できるようになる。不思議、そして素敵。といっても、やっぱり今回は、今まであっさりとしか語られなかった今泉の過去と、あの人との繋がり。この驚きは是非、体験して欲しいと思います。シリーズを読んでいるのに、これを読んでないのは相当損してますよ。

ガーデン   読了日:2001年05月25日