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フラグメント (新潮文庫)

フラグメント (新潮文庫)

あれは事故死なんかじゃない。親友の死に同級生・相良優は不審を抱く。城戸ら不良グループが関与しているはずだ、と。葬儀当日―担任教師の車で、相良・城戸を含む同級生6名が式場へ向う途中、大地震が発生!一行は崩落した地下駐車場に閉じこめられてしまう。密室化した暗闇、やがて見つかる城戸の死体…。極限状況下の高校生たちに何が起きたのか。


文庫化の際に「フラグメント」に改題された作品。初読は5年前、講談社ノベルスの「少年たちの密室」だった。今回、再読して驚いたのは、5年経っても内容(事件・犯人・結末)を鮮明に覚えていたこと。そのぐらい私に強い印象を残した本。けれど、それは決して良い意味だけではない。閉鎖状況での殺人事件を扱うミステリとしても面白いのだが、小説として胃に重く響く読後感が忘れられなかった。
この小説は本当に苦い。「ほろ苦い」なんかでは済まされないぐらい苦い。できれば口には入れたくないけれど、社会にはこういう事があり得るのだということを経験から理解しているので更にリアリティを感じて重く苦い。この本のようなケースが全国の学校に無いとは言えない。むしろ、絶対にあると確信が持てるのが辛い。
文章の比喩は、ちょっと伝わりにくく、いま一つしっくりこなかった。また主人公・相良優の性格設定がいささか強気すぎるとも思った。けれど後に、この性格だからこそ物語が展開し、結末にきて苦味が増すのだと分かる。今回は初読時よりも、随所に謎の解明のための、物語の厚みを出すための伏線が張られていることに目がいった。推論が続く中盤以外はミステリとしてよりも、学校という狭い世界の闇や、地震で閉じ込められた危機的状況の張り詰めた人間模様を描いた社会派の小説として読めた。だからかもしれないが、思わぬ所で、思わぬ物、思わぬ描写が出てくるミステリ的な構成・伏線の巧みさが何倍にも効いている。物理的な謎よりも人間の心理を巧みに描いたミステリ、という点も好きだ。
(ネタバレ反転→)「無能力」の男が生徒より一歩先を行く「能力」を得たのはナゼか、という問題が一番の盲点だった。思えば最初から塩澤は、宮下の言葉によって何度も教師としての能力の欠如が指摘されていたのだ。結局、行動面でも黒幕ではあったが、塩澤という人間の性格・行動理念を深く知ることによって、見える様相が何度も変わっていくのが面白かった。(←ここまで)

フラグメント(少年たちの密室:改題)たいとる   読了日:2001年04月13日