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ほうかご探偵隊 (ミステリーランド)

ほうかご探偵隊 (ミステリーランド)

僕のクラスで連続消失事件が発生。僕は四番目の被害者に! …といっても、なくなったのはもう授業でも使わないたて笛の一部。なぜこんなものが!? 棟方くんの絵、ニワトリ、巨大な招き猫型募金箱、そしてたて笛が一日おきに姿を消すという奇妙な事件が五年三組にだけ起こっている。ニワトリなんか密室からの消失だ。この不可思議な事件を解決してみないかと江戸川乱歩好きの龍之介くんに誘われ、僕らは探偵活動を始めることにした。僕がちょっと気になっている女子も加わり事件を調べていくのだが…。そこにニワトリ惨殺目撃証言が! 町内で起きた宝石泥棒との関連は? 龍之介くんの名推理がすべてを明らかにする。


ここ1週間の間にクラスの中で起こった、誰も注意を払わないモノたちが次々消える「不要物」連続消失事件。その謎を追うのは4人の少年少女探偵団たち。「不要物」の消失の謎、という不思議だけれど誰も興味を示さない謎を探る、という探偵団の結成理由からして倉知作品らしい呑気さだなぁ…。
…などと高を括っていたら、調査によってニワトリは完璧な密室(飼育小屋)から忽然と姿を消した事が判明し、遂に事件は殺鶏事件に発展するから驚いた。クラス内の不思議な現象は学校の大事件となり探偵団の面々はその事実に愕然とする。学校中を歩き回った龍之介少年が導き出した推理とは…。
いやいや、龍之介少年の想像力恐るべし。真相よりも少し残酷で、その分、少し魅力的に映りかねない推理を朗々と述べるとは…。良い性格してます。二転三転する終盤の展開も含め、後半はただただ愉快でした。龍之介少年の生みの親である作者の悪戯心にもいい様に振り回された作品。
ラストの真相がまた倉知さんらしい。倉知作品に良く使われる悪意のない人たちの思惑・思い込みが単純な事件を複雑に、そしてミステリとしては魅力的にしている。今回は特にミステリーランドで登場人物が小学生という事もあって、この頃特有の猪突猛進な正義感、逞しい想像力が効果的に暴走している。序盤の謎の魅力も勿論だが、中盤のミスリードで読者を徒に不安にさせる人の悪いテクニック、そして良い感じに読者を脱力させる真相は今回も健在。謎も疑心暗鬼も綺麗に消してしまう倉知さんの手法はミステリーランドの健全さと相性が良い。
目を奪われたのは伏線の張り方。「これは伏線だ」と一目瞭然で分かるものから「これも伏線だったの!?」と後で気づくものまで、おっとりとした雰囲気の土壌に、数々の驚きの種が植え込まれていた。ここ何十年かの公立小学校は全国どこでも、この学校の構造と大差は無いだろうから、多くの読者にとって学校の建物や学校関係の物品は共通知識としてあるはず。笛や掃除ロッカーなど懐かしく思い出し、特に笛の発見場所は思わず「そうそう、そうなってた」と深く頷いた。
リスにも仔猫にも似ているという小動物系の龍之介少年。あれれ、それってもしかして!?と含みを持たせている。書名の『ほうかご探偵隊』はてっきり彼らを指すのかと思っていたら、書名はミスリーディング!? 細かい箇所にも読者を騙すトリックが仕掛けられている、のか…? 挿画は猫丸先輩シリーズでもお馴染みの唐沢なをきさんが担当。75ページの棟方くんが描いた絵が細部までの再現に制作者側のこだわりが見られたような気がした。良いコンビです。

ほうかご探偵隊ほうかごたんていたい   読了日:2008年01月18日