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星降り山荘の殺人 (講談社文庫)

星降り山荘の殺人 (講談社文庫)

雪に閉ざされた山荘。ある夜、そこに集められたUFO研究家、スターウォッチャー、売れっ子女流作家など、一癖も二癖もある人物たち。交通が遮断され、電気も電話も通じていない陸の孤島で次々と起きる殺人事件…。果たして犯人は誰なのか!?あくまでもフェアに、読者に真っ向勝負を挑む本格長編推理。


読書前から「とんでも本」みたいな評判を目にしていたので、もっと「バカミス」的作品を漠然と予想していた。…が、なんだ、ただの「本格」じゃん(笑)
ミステリの評価を、技術点(トリック、犯人の意外さ、伏線の張り方など)と芸術点(文章・人物の描き方、小説としての面白さなど)とに分けた場合、技術点はかなり高い作品。まずは着想が秀逸。そして、そのアイデアを本格の枠から外れずに完結させた点、前代未聞・驚天動地の結末を用意した点は、作家の技術の高さが成せる業。読者を騙し切るだけの技量、ミスリーディングさせる誘導方法、犯人指摘のロジック・意外性など、作者が目指す「本格」に適った作品である。
ただ、小説として芸術点は低い。あのアイデアを際立たせるために、芸術性(?)を犠牲にしている部分もあるとは思うが、作者の個性である柔らかさやユーモアまでも犠牲にしてしまった。倉知さんの中の「本格」は、硬くて退屈なモノなのだろうか? 『過ぎ行く風〜』の好例のように「本格」と個性は共存できない訳ではないと思うのだが…。作者らしさが失われたのが本書最大のマイナスポイント。
また犯人が判明以後の展開、語られる動機が、安直で好きになれない。複数の人が背後関係を知っているのならば、最初から動機を考えていれば犯人の目処が早くつきそうなものだが…。ここら辺も、倉知さんがアイデアや、倉知さんが考える「本格」に囚われ過ぎているような気がしてならない。
(ネタバレ感想→)一言で言えば、本格推理小説内の変格叙述トリック。章始めの文章が叙述トリック、ミスディレクションを狙った点が最大のトリック。犯人、探偵、助手という役割については最初からフェアプレイで書かれているが、読者の中では終盤になって(勝手に)登場人物のスタンスがコロコロ変わっていくのが面白い。
「とんでも本」という評判で私が予想していたのは、UFOがトリックに使われ、犯人は宇宙人という真相(それを、どうやって「本格」の範疇で収めるのかは分からないけど…)。倉知さんならば、そういう悪戯心に溢れたバカをやっても許されるそうだから、この作品が騒がれているのかと誤解していた。また、読書中は星園の故郷の事件が関わってくると思っていたのに、あんなオチで処理されてしまった。あの事件の方が、この地味な事件よりも面白そうなのに…。(←)

星降り山荘の殺人ほしふりさんそうのさつじん   読了日:2007年04月10日