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猫丸先輩の空論 (講談社文庫)

猫丸先輩の空論 (講談社文庫)

アパートのベランダに毎朝置かれる、水の入ったペットボトル。交通事故現場に集結する無線タクシー。密室状態のテント内で割れた七つのスイカ―誰が、なぜそんなことを?不可解な「本格」的状況を神出鬼没の童顔探偵・猫丸先輩がすらりと解決。その推理はますます冴えわたる!?人気シリーズ第2弾。


本書の謎は日常のほんの些細な事件・疑問・トラブルである。どれもこれも大した実害はないが精神衛生上よろしくない、そんなモヤモヤの謎。誰かこのモヤモヤを吹き飛ばして、と登場するのが猫丸先輩である。しかし猫丸先輩が言う事は飽くまでも「空論」。たとえ吹くのは法螺であってもモヤモヤは一応晴れる。
本書では日常的に身の回りにある物でも、固定観念を取り払って発想を転換し、もう一度、その物の特徴を洗い出してみる、という猫丸先輩(倉知作品)らしい解決法が幾度も見られる。ただ、その物をそんな目的の為だけに使うか?とか、それ以外にも方法はいくらでもあるだろうに…、という印象は残る。しかし、それもこれも「猫丸先輩の空論」である。信じるか信じないかは貴方次第。
本書はこれまでにも増してドタバタ劇がパワーアップ。しかし一方で、ミステリとしてはパワーダウンの印象もある。特に2,5編目では口喧嘩・大食いの描写が余りにも冗長過ぎる。その中に手掛かりや伏線が隠れているというのは分かるのだが、もう少し読み応えが欲しい所。寡作なんだからさ、倉知さん。
猫丸先輩もシリーズを重ねる毎に、傍若無人な態度がパワーアップ。しかし一方で、身長は益々小さくなっていくような…。外見描写もどんどん若返っている。まさかそういうトリック!? そのトリックなら先行作品がありますよー。

  • 「水のそとの何か」…毎朝、アパート1階のベランダに決まって置かれるペットボトル。その中には水が満々と詰まっているのだが…。序盤の無駄な××トリックが素敵。猫丸先輩の言う真相はまあ、こういう方面の問題では人は冷静な判断力を失うからね、という事で納得。八木沢くんだけは推理の正誤が分かって羨ましい。
  • とむらい自動車」…交通事故が多発し、昨日も友人が事故に遭ったばかりの現場に続々と集結させられた無線タクシーの謎…。全編を通した無駄なミスリーディングが素敵。真相はそれしか思い付かないが、けどそんなのありえねぇ! タクシーの使い方の逆転の発想は好きだけど、けどこれはあんまりじゃねぇ!
  • 「子ねこを救え」…近所の家に住みついている4匹の兄弟子ねこ。だが、その中の一匹だけが不当に虐げられているらしく…。これは猫丸先輩シリーズによく見られる(→)思い込みの猪突猛進(←)パターン。事の真相がどうであれ、これからこの子ねこは絶対に幸せに暮らせる、という安心安全のラストが良いですね。
  • 「な、なつのこ」…カーテン状の布で周囲を覆われた密室状態のテントの中で割れ落ち、散乱していた7個のスイカの謎…。うーん、(→)密室のカーテンよりも「陣地」という心理的な壁に阻まれた(←)という犯人の行動理由の説明は面白いが、腑には落ちない。回りくど過ぎる。恋は予想通りの結末に。猫丸先輩、珍しく半袖。
  • 「魚か肉か食い物」…大食いチャレンジ全戦全勝の友人が巨大なステーキを目前にして突然、逃亡した。その理由は…? 魚も肉も食い物です(笑) これも、その行為を再認識するとそうなるのか、という納得はあるけれど、3万円を人に押し付けるほどの動機かなぁ、と首を傾げてしまった(勝算があるにしろ)。
  • 「夜の猫丸」…独り残業していた夜中に同じフロアの外線電話が順々に鳴り響く…。これまでのオールスター感謝祭。謎への合理的な説明に、背筋がゾクっと震えた。最短の短編ながら本書で一番面白かったかも…。なんか残念である。

猫丸先輩の空論ねこまるせんぱいのくうろん   読了日:2008年03月29日