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猫丸先輩の推測 (講談社文庫)

猫丸先輩の推測 (講談社文庫)

『家火災、至急連絡されたし。』夜な夜な届く不審な電報、花見の場所取りをする新入社員を次々襲う誘惑と試練、行方知れずの迷い猫…。平和だった毎日を突然かき乱す小さな「大事件」を、神出鬼没&ほのぼの系の名探偵・猫丸先輩が鋭い推理でずばり解決!これぞ本格ミステリの精粋といえる6編を収録。


まず、なんといっても表紙の素晴らしいこと!(文庫版・ノベルス版どちらとも) イラストを担当されたの唐沢なをき氏に万雷の拍手を。パチパチパチ。
では、その表紙を捲った中身の感想を。本書の特徴・共通点を無理矢理見つけ出すとすれば、被害妄想型の被害者が多い事だろうか。客観的に見れば、後に真相を知ってみれば事件は小さいのに、主観的には大問題に思えてしまう被害者たちだ。一方、加害者たちの特徴としては(→)ある秘密の隠蔽工作(←)が動機として多かったように思う。また今回は様々な職業に関する物語でもある。加害者から被害者まで、真っ当な職業から職業といえない悪い輩まで。日常の謎というよりも、職業の謎、そして少々の嘘。これが本書の共通点だと思う。
短編の題名が倉知さんにしてはいまいちと思ったら名作のパロディなのね(>解説より)。「クリスマスの猫丸」の元ネタは『クリスマスのぶたぶた』かと思ったわ。そして倉知さん、もっと仕事量を増やしましょうよ!(>解説より)

  • 「夜届く」…「家火災、至急連絡されたし。」男性の独り暮らしの部屋に夜な夜な届く不審で不穏な電報の目的は…。この真相は盲点というよりも自意識過剰な私には見もしない、考えもしない場所にあった。私も同じ被害にあったら被害者と同じ発想をすると思うので、猫丸先輩の指摘に我が身を恥じる思いをした。
  • 「桜の森の七分咲きの下」…花見の場所取りをする新入社員を次々襲う誘惑と試練。一体この試練は何のため…? 謎自体よりも話の流れの美しさに感心。何気ない舞台、何気ない伏線、確証はない推測。彼の身内の犯行(?)って推測もなかなか面白い。花見大会と、彼の新生活が楽しいものでありますように…。
  • 「失踪当時の肉球は」…行方知れずの迷い猫を捜すハードボイルド風の探偵。だが捜索中に妨害工作に遭い…。この短編も逆転の発想。意外な犯人と、その動機に驚く。にしてもこの探偵、プロ意識を持つなら自意識を消すべきだろう。仕事の成功率の高さと原動力は動物への愛なのだろうけど、怖い…。
  • 「たわしと真夏のスパイ」…大手スーパーに客足を奪われた商店街が企画した夏祭り中、次々に事件が発生する…。舞台と謎と真相が見事に融合している。(→)事件の発覚を恐れて悪事を重ねてしまう(←)のは日本人的である。それは許されざる事なのだが、犯人の心情も理解できてしまう私も日本人。
  • 「カラスの動物園」…動物園内で遭遇した引ったくり事件。だが追い詰められた容疑者は何も持っていなかった…!? これは謎としては至って普通…。現金が消えた謎の演出も微妙で、不可解性は出てなかった。猫丸先輩登場まで出来るだけ長く引っ張る話も、ちょっとキツく感じられた。グッズ展開には大賛成!
  • 「クリスマスの猫丸」…茶店の窓から見えた、クリスマスイブの商店街を疾走する複数のサンタクロースの正体は…。謎もなかなか面白いが、何と言っても短編中の猫丸先輩が遭遇した殺人事件という言葉が目を惹く。これは次巻予告!? うーん、5年経っても出版されてないみたいだけど…。仕事量を増やしましょう!

猫丸先輩の推測ねこまるせんぱいのすいそく   読了日:2007年09月05日