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日曜の夜は出たくない (創元推理文庫―現代日本推理小説)

日曜の夜は出たくない (創元推理文庫―現代日本推理小説)

今日も今日とて披露宴帰りに謎解きを始めた猫丸先輩。新聞記事につられて現地へ赴くこともあれば、あちらの海では船頭修業。絶妙のアドリブで舞台の急場を凌ぎ、こちらでは在野の研究家然とする。飲み屋で探偵指南をするやら、悩み相談に半畳を打つやら…天馬空を行く不羈なるおかたである。事ある所ないところ黒い上着を翻し、迷える仔羊の愁眉を開く、猫丸先輩ここにあり。


初・倉知作品、初・猫丸先輩である(厳密には猫丸先輩は『五十円玉二十枚の謎』が初登場)。解説の「小野不由美」さんが書かれている通り、どの作品にも「人間味」がある。多くの短編で殺人という題材を扱いながらも、猫丸先輩をはじめ登場人物の陽気さや人間臭さが血生臭い雰囲気を消し去ってくれている。
欠点を挙げるならば、どれも基本のトリックは小ネタという感じがする点。そして猫丸先輩は登場と同時に謎を解決してしまう探偵なので、仕方ないと言えば仕方ないが、謎とはあまり関係ない描写でページ数を水増ししているような気がする点。しかし、一番の欠点は最後の「創元推理」的な展開。私はこの部分、不必要だと思う。連作短篇集の場合、その仕掛けが成功するば作品への評価は倍になるけれど、失敗した場合、評価が半分になる賭けだと思うからだ。今回は失敗例かな、と思う。もちろん、それがなければ作品として「弱い」というのは分かるが。

  • 「空中散歩者の最期」…墜死した男が落下し始めたと思われる高さにあるのは何もない虚空だった。彼はどこから表れたのか…?完全にトリックに無理があると思うのだけど…。空飛ぶ夢の描写は「10センチの空」を連想しました。
  • 「約束」…毎日公園で会って、明日も会う約束をしたはずの「おじちゃん」が当日、凍死体となって見つかる…。事件・トリックは地味だけど、何気なく張られた伏線や温かくも切ない交流が心に残る。最初「おじちゃん」が悪役だと思った。
  • 「海に棲む河童」…舟が沖で難破し、孤島に逃れた猫丸と大学生2人。大学生が語る河童の物語の隠された真実とは…?作中の話がとても怖い。標準語訳の方が読みにくいのはナゼ?(注釈多すぎ…) ナンパ目的が難破、なんてね☆
  • 「一六三人の目撃者」…小劇場での舞台中、突然役者が倒れた。彼が最期に口にした飲物には毒物が混入していた。一体誰がいつどうやって…?衆人環視の中での殺人パターン。毒物の問題(混入時機など)が盲点を突いていて面白かった。
  • 寄生虫館の殺人」…1階にいたはずの女性が突然3階に死体となって現れた。加害者と被害者はどうやって現れ、消えたのか…。簡潔な話。この終わり方も冷房が急に効いたような背筋の寒さを感じて好きなんだけどなぁ…。
  • 「生首幽霊」…悪戯目的で侵入しようとした部屋には生首が一つ転がり、言葉を発した…。事件の発端となる「意趣返し」。こんな事で意趣返しをするか?とも思う…。前の短編と同じく「外見」が巧みに利用されている所が上手いと思った。
  • 「日曜の夜は出たくない」…表題作。日曜の夜に近所で起こる刺傷事件。犯行時間は彼が私を家まで送る時間に近いと気づき…。真相を聞くとこの「アベック」、勝手にしやがれって感じです(>僻み)。ミステリの皮で包んだ自慢大会です。
  • 「誰にも解析できないであろうメッセージ」…次の短編への伏線なんだろうけど、余りにも強引で魅力的ではない話だと思った。必要かな、コレ?
  • 「蛇足─あるいは真夜中の電話」…どんでん返し、というには地味な展開。面白くない、と一刀両断には出来ないが快刀乱麻を断つ展開だとも思えない…。

日曜の夜は出たくないたいとる   読了日:2003年05月25日