- 作者: 鯨統一郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/02/24
- メディア: 文庫
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東洋の寂れたバーの片隅で、過去幾たりもの歴史学者を悩ませてきた謎がいともあっさり解明されてしまうとは。在野の研究家以上には見えない宮田六郎が、本職の静香を向こうに廻して一歩も引かないどころか、相手から得たばかりのデータを基に連夜の歴史バトルで勝利を収めていく。宮田の説に耳を傾けながら、歴史に興味を持ち始めた若い頃のようにワクワクするジョゼフであった。
デビュー作『邪馬台国はどこですか?』の姉妹編。このシリーズは「スリーバレーシリーズ」でいいのかな?「邪馬台国〜」が主に歴史上の重要な出来事・事件を取り上げて新説を披露していく内容に対して、本書は、まだ十分に解明されていない世界の謎を取り上げている。門外漢だからか、今回は三谷教授は出てきません。存在を暗示させるような店名と描写ではありましたが…。
今回は、世界史(の分野なのか?)の知識が全くない宮田が、世界の不思議に関して静香の知識を基に新説を導き出す、という展開。私も宮田並み(以下)の知識しかないので親切な説明によって内容を楽しむことが出来ました。この説明や条件提示、何気ない伏線などは、まさにミステリの構成。少ないページの中で条件とヒント、そしてアッと驚かされる真相など、短編の面白さを味わえます。しかし悲しいかな、似た作品が集まった短編集の定めで、前半の作品が一番驚けて、後半にいくに従って慣れて(飽きて)しまう(実際に前半の方が出来が良いような気もする)。 所々に挿まれる小ネタにも笑った。そして二人の関係も気になる所。解説によると、静香が主演の長編もあるらしい。いつかは読みたいものだ。
- 「アトランティス大陸の不思議」…アトランティス大陸は実在するのだろうか…?一番目の短編だからだろうか、一番「ほぉ〜」と思った作品。アトランティスは有名な割に、少ない出典、あやふやな証拠(?)しかないことに驚いた。
- 「ストーンヘンジの不思議」…ストーンヘンジは、なぜ長い工期をかけてまで完成させなければならなかったのか…。ストーンヘンジへの新説に加え、もう一つ先の展開に驚かされた。一文目から最後まで無駄のない美しいミステリ。
- 「ピラミッドの不思議」…ピラミッドはなぜ作られ、なぜあれほどまでに巨大なのか…。宮田の出す新説にしては普通すぎて不満です。今回は長々と議論した内容があまり加味されていないような気がする。いささか強引な終わり方。
- 「ノアの方舟の不思議」…旧約聖書に登場する「ノアの方舟」の伝説は本当にあったことなのか…。論理としてはやや弱い気もするけれど、ゾクッとするような余韻を残す結末。日本の話と結び付けすぎのような気がする…、と思いきや!?
- 「始皇帝の不思議」…史上最悪の暴君と呼ばれる秦の始皇帝。果たして、その実態は…? 今回は不思議関係の話というより、真っ当な(?)歴史ミステリ。どちらかといえば「邪馬台国〜」寄りの短編。真っ当に勉強になりました。
- 「ナスカの地上絵の不思議」…ナスカの地上絵はなぜ描かれたのか…?解釈として非常に面白かった。私たちの周りにも現実的には意味のない事物がありますもんね。ちなみに私は、宇宙人説を知ってたから地上絵を見るのが怖いです。
- 「モアイ像の不思議」…モアイ像は誰が、何の意味を込めて作ったのか…。なるほど全ての話がここに行き着くのか!と驚きました。もちろん、かなり強引ではあるけれど、今までの話が収斂していくような面白さがあります。