《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

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神様のパズル (ハルキ文庫)

神様のパズル (ハルキ文庫)

留年寸前の僕が担当教授から命じられたのは、不登校の女子学生・穂瑞沙羅華をゼミに参加させるようにとの無理難題だった。天才さゆえに大学側も持て余し気味という穂瑞。だが、究極の疑問「宇宙を作ることはできるのか?」をぶつけてみたところ、なんと彼女は、ゼミに現れたのだ。僕は穂瑞と同じチームで、宇宙が作れることを立証しなければならないことになるのだが…。第三回小松左京賞受賞作。


分からない事を分からないままにしておくのは嫌なのに、分からない事を分かる為には多大な努力と根気が必要な事は分かっている。だから、私たちはその不安ごと心の片隅に放置してしまう。始めから匙を投げて誰かが解明してくれるのを期待して生きる。でも、それでいいのか? 本書の発端は自分の老い先が長くはなく、このままでは誰も自分の抱える「謎」を解明しないまま生が終わるのではないか、と「謎」の放置に焦燥や恐怖を抱き始めた橋詰老人の言葉であった。その「謎」とは、「宇宙はどうやって作られたのか?」であった…。
もしかしたら人類最大の謎を扱っているミステリ。本書はSF小説なのだが文庫版の解説で大森望さんも述べている様に、本書の主人公二2人は探偵と助手のような関係が見られる。頭脳明晰で一足飛びに思考するが性格に問題の多い探偵・穂瑞沙羅華と、何をやってもダメダメでお人好しだけが取り柄の助手・綿貫基一。彼ら2人の凸凹大学生コンビがこの世界に宇宙を作る!?
SF小説初心者ですが、SF小説は面白い!と思わせてくれた作品。…と言ってもダメダメ大学生の綿貫を窓口に読者に与えられている専門用語や知識で理解できたのはそのイメージだけだったけど…。それでも私の脳内で素粒子から宇宙の果てまでイメージが飛翔する様子にとても興奮した。SFの発想の素晴らしさ、小説の器の大きさを十分に感じられた。そしてSF小説でありながら前述のように推理小説でもあり、また読了後は紛れもない青春小説の爽快感まで味あわせてくれる贅沢な作品。史上最大の謎、宇宙の開闢(かいびゃく)から行く末までの『秘密が、論理的に解明されていく過程の興味に主眼をおいた小説(大辞泉)』で、それは推理小説の定義そのものであった。宇宙という全体の話から、地球とその中の一個人という極小の部分までの様々な「不思議」を描く。
最も興奮した場面は、休眠している世界中のパソコンのメモリを使って(ほぼ無断で)、宇宙の開闢のシミュレーション。現代物理学の謎を一気に解決する理論を基礎とする、人類の叡智の詰まった仮想宇宙なのだが、仮想宇宙が創世される場所が、エサ(Hなコンテンツ)で釣って世界中の端末という、ある意味、人類の本能と理性が共存する稀有な例であった(笑) そして、その模擬実験の結果は…。
ラストの「むげん」の安定は、そのまま彼女の精神の安定に繋がるのだろう。終盤で自分の内面を爆発させた沙羅華は、この世の桎梏を全て水に流したのだ。
一方、本書の中で分からないままの部分もあった。専門用語も勿論だが、登場人物たちの心の動きは私には解明できない点が幾つかあった。特にゼミ内の敵対派の面々はその役割や行動がパズル的に配置されていた様に思う。そして綿貫の片想いには、中学生じゃないんだからと飽きれ返った。まぁ、体当たりをして傷付くぐらいなら、恋をしてる振りをするのが彼の処世術なのだろうが。
本書は2027年(だと思う)の近未来の設定。科学技術は現代よりも進化している。そして気になったのが、学生の彼らが揃って未来に悲観的である点。どうも『終末』を予感させるような言動があるが、どうなんだろう…?

神様のパズルかみさまのパズル   読了日:2009年01月14日