- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/06/28
- メディア: 文庫
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遠く、近く、求めあう二つの魂。想いはきっと、時を超える。『スキップ』『ターン』に続く《時と人》シリーズ第三弾。
「また、会えたね」。昭和二十年五月、神戸。疎開を前に夢中で訪ねたわたしを、あの人は黄金色の入り日のなかで、穏やかに見つめてこういいました。六年半前、あの人が選んだ言葉で通った心。以来、遠く近く求めあってきた魂。だけど、その翌日こそ二人の苛酷な運命の始まりの日だった→←流れる二つの《時》は巡り合い、もつれ合って、個の哀しみを超え、生命と生命を繋ぎ、奇跡を、呼ぶ。
「時と人」三部作最終作。実は私はこの作品に苦手意識を持ってしまいました。理由は戦時下の話が大半を占めているから。私は、戦争の写真や映像を見るのが好きではありません。なので本の出来・不出来の前に嫌悪というか忌避したいという気持ちが強くなってしまって、戦時下の出来事というだけで物語全体が薄暗く見えてしまった。更に北村さんにしては、作中に不幸が多かったような気がします。悲しいことがなければ「リセット」にならないんでしょうが、時に翻弄されながらも強く生きる女性を描いてきたシリーズにおいて、その強さも折れてしまうような悲しみには、私も折れてしまいそうでした。ちなみにこの「時と人」三部作の共通点は主人公が女性、そして名前の最初の文字が「真」であること。その理由は、知らないんですけど…。すいません…。
(ネタバレ:反転→)最後は、過酷な運命を乗り越えて巡り合う二人ですが、それまでの道のりはかなり長い。求め合う意識は残っていたとしても死んでしまった、という事が消化できませんでした。やはり死んでしまうのでは悲しすぎます。時に翻弄される、というのがシリーズの決まりごととはいえ、人生の限られた時間の中で精一杯生きる姿を読みたかった、と思ってしまった。(←)