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覆面作家の夢の家 (角川文庫)

覆面作家の夢の家 (角川文庫)

12分の1のドールハウスで行われた小さな殺人。そこに秘められたメッセージの意味とは!?天国的美貌を持つミステリー界の人気作家「覆面作家」こと新妻千秋さんが、若手編集者・岡部良介とともに、残された言葉の謎に挑む表題作をはじめ、名コンビが難事件を解き明かす全3篇を収録。作家に探偵、おまけに大富豪のご令嬢と、様々な魅力を持つお嬢様探偵、千秋さんの名推理が冴えわたる"覆面作家"シリーズ第3弾。


最終巻の3巻目。様々な変化があり、今までの歴史の積み重ねがあり、そして愛しい結末がある。この本でもオールスターとまではいかないが、全巻読んだ読者への特典みたいな事がある。こういうサービスは素直に嬉しいものだ。「覆面作家と謎の写真」では良介の周辺が慌しく、彼は家を出て一人暮らしを始めるし、アメリカに旅立った左近先輩が電話ながらに登場する「馬鹿ね」。「覆面作家の夢の家」では千秋の身内も登場するし(再読ながらスッカリ忘れていてとても楽しめた…出てたんだあの人)、千秋さんが作るドールハウスの小物は「前作」に登場した物だ。そして何よりの読者の喜びは結末だろう。甘い、甘すぎる!糖度計で計ったら何十%なんだ君たちは!でも好き、大好きな結末。ニュートラルな千秋さん。この本で終わってしまうのはとても悲しいが、結末を見届けられた幸せのほうが勝っている。3作でもいいミステリ、人間関係は書けるんだぞ!分かったか、世の長いシリーズで結末を先延ばしにしている作家さんたち!すいません、取り乱しました。

  • 覆面作家と謎の写真」…東京ディズニーランドで撮られた1枚の写真に、その時間には海外にいるはずの男性が写っていた。どうやって時を場所を越えたのか…?一風変わったアリバイ崩しの話。北村作品らしい「情」と「理」の話だと思う。物語の冒頭の展開には驚いた。ここでは時が流れそれぞれの生活があるのだ。そこがまたいいのだけど。マンボウの話は笑った。私もこういう癖があるので…。
  • 覆面作家、目白を呼ぶ」…慣れぬ道の道案内をある女性に頼み、山道を彼女の後ろをついていく良介。しかし良介の目前で彼女の車は急に左右に揺れ、崖下に転落した。彼女の身に何が起こったのか…?牧歌的なタイトルに裏切られる。いや勝手に誤解しただけなのだが。希望を与えてくれる文章と共に生活の閉塞感や息詰まりをリアルに書ける北村さんの腕に脱帽。読んでいるだけで胃が痛い。
  • 覆面作家の夢の家」…ドールハウス愛好家の女性の元に届いた、同じく愛好家の男性からのドールハウス。その小さな部屋では、その男性が矢で射られダイイングメッセージを残して死んでいる。果たしてこれは何を意味してるのか…。作中でも良介たちが言っている通りまどろっこしい。これを嬉しく思うか、面倒臭いと思うかは相手の気持ち一つで、その時点でもう話は終わるのではないか?と思った。でも、どこか風流で素敵だ。良介と千秋のロマンス(古い?)も素敵な終わり方。そうか全ては「家」なのか…。新妻家の受けも良さそうだし、お幸せにね。

覆面作家の夢の家ふくめんさっかのゆめのいえ   読了日:2000年09月上旬