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覆面作家の愛の歌 (角川文庫)

覆面作家の愛の歌 (角川文庫)

ペンネームは覆面作家―本名・新妻千秋。天国的美貌でミステリー界にデビューした新人作家の正体は、大富豪の御令嬢。しかも彼女は現実に起こる事件の謎までも鮮やかに解き明かす、もう一つの顔を持っていた!春のお菓子、梅雨入り時のスナップ写真、そして新年のシェークスピア…。三つの季節の、三つの事件に挑む、お嬢様探偵の名推理。人気絶頂の北村薫ワールド、「覆面作家」シリーズ、第二弾登場。


覆面作家シリーズ第2弾。別れがあり新たな出会いがありの盛りだくさんの内容。2作目になるとシリーズの「定番」が出てくる。また、その逆の「定番崩し」もある。そして登場人物に親しみを持ち、新たな一面を知るのが楽しいのも2作目。例えば「定番」は千秋さんが門を飛び出し、人格(性格?)が変わる場面。そして今回初めて行われた「定番崩し」は千秋さんの帰宅シーン。定番とは逆の、リョースケから岡部さんへの切り替わりが見れた。どんな帰宅方法であれ門をくぐり、敷地内に入ると人格が変わるらしい。ヘリコプターやパラシュートなどの上空から、またはトンネルを作っての地下パターンからの進入も見てみたいが物語にはおよそ関係ない…。そして新たな一面といえば千秋さんのバックグラウンドだろう。なぜお金持ちなのか?ご両親は?リョースケとの関係は?と色々と知れる2作目でありました。今回、初登場の静さんは名字なのね。静さんの強引ながら憎めないキャラクタは好きです。

  • 覆面作家のお茶の会」…評判も上々のこれからというケーキ屋の職人が突然、寺にこもってしまった。一体彼に何が起きたのか…。失踪というテーマながら明るいミステリである。しかし物語の背景を知るとやっぱり暗い。現実を見させられた感じがした。しかし浮世離れした千秋さんの最後の一言が胸を打つ。左近先輩の退場はちょっと悲しい。良介が一人前に見えるためか?静さん初登場。
  • 覆面作家と溶ける男」…子供に声を掛け頼み事をする謎の男。その男は雨が降り出すと一目散に逃げると言う。果たして男の目的とは…?ロマンスにもなりうる展開だったが悲しい展開に。犯行の動機が分かりそうで分からないのが怖かった。現実の事件でもありうる動機だ。人の心は自分でもどうしようもない偏りを生んでしまうこともあるだろう。静さんと優介の再会。動き出すもう一つの絆。
  • 覆面作家の愛の歌」…ある劇団の看板女優が殺された。しかし最優先に疑われる恋人と元恋人は犯行時刻に片時も離れずに行動していた。事件の真相はいかに…。アリバイ崩しの話。トリックは「言いたい事は十分に分かる。だけど具体的には何も分からない」といった感じ。北村さんでこうならば誰が書いても分からないだろう。多重に繰り広げれる入れ替えトリックが面白かった。あの人たちは、この為に設定されたのではないか(笑)?千秋とリョースケの驚きの展開。待て次巻!

覆面作家の愛の歌ふくめんさっかのあいのうた   読了日:2000年08月中旬