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六の宮の姫君 (創元推理文庫)

六の宮の姫君 (創元推理文庫)

最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった…。


シリーズの中でも異色の作品。探偵は「私」であるし、謎解きも日常ミステリを前面に押し出すこのシリーズの中にあって今の所、唯一の「文学」ミステリ。この本は様々な分岐点が隠されている。卒業論文という事は主人公の大学との別れを意味するし、その先の未来もある。そしてもう一つの運命も…?
↑のあらすじにある通り芥川の事が多く書かれています。私なぞは高校時代に「羅生門」を授業で習った以外読んだことないので正直、敷居が高かった。しかし北村さんは話の持っていき方がうまい。「文学」を知らない私などにも順序良く必要な情報を読者に与えてくれる。もちろん、それは意図されたものではあるけれど、アリアドネの糸のように読者を解決への道に導いてくれる。この物語の解決は素晴らしい。世の中には素晴らしい作品がある可能性をまた示してくれている。そして、どんな作品・インスピレーションにも切っ掛けがあり、それを調べる事で思いを馳せる事が出来るということを知る。円紫さんは少ししか出てこないけれど、それは「私」の一人立ちへのプロローグであろう。そして誰でも学ぶ事・調べる事によって探偵になれるということ。学問という事も同じであろう。世の謎を解き明かす為に学ぶ。その大切さを改めて実感。今更、遅いという突っ込みは無しで。この本は特に「私」の口を借りて、北村さんの想いが強く出ている作品だと思う。
そういえば↓の『静かなる謎 北村薫』の中でも語られていたが、真珠夫人のドラマ化の話は先見の明。そして同じく「私」と正ちゃんの関係。この本でも言葉で「私」を支えてくれた正ちゃん。まさに恋人である。同性でなければ「私」は正ちゃんと幸せになっただろう。「私」を支えてくれる男性は…。

六の宮の姫君ろくのみやのひめぎみ   読了日:2000年10月01日