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秋の花 (創元推理文庫)

秋の花 (創元推理文庫)

絵に描いたような幼なじみの真理子と利恵を苛酷な運命が待ち受けていた。ひとりが召され、ひとりは抜け殻と化したように憔悴の度を加えていく。文化祭準備中の事故と処理された女子高生の墜落死。親友を喪った傷心の利恵を案じ、ふたりの先輩である『私』は事件の核心に迫ろうとするが、疑心暗鬼を生ずるばかり。考えあぐねて円紫さんに打ち明けた日、利恵がいなくなった…。


日常ミステリが代名詞だったはずの円紫さんシリーズに遂に死者がでてしまう。しかも「私」の中学・高校の後輩である仲良し2人組みの1人が。「きっと」の未来を信じた、信じる力を持っていた少女の死。そして残された一人の孤独。
そうか、話を組み合わせるとそういう結論が出るのか‥と論理的には納得してミステリ的面白さは十分なんだけれど、切ない‥あまりにも切な過ぎる結末ではないか。思い返してみれば、色々なところに伏線があったし、何の齟齬もないのだけれど、こうあってほしくない、という悲しい結論。北村さんの優しい文章だからこそ、そこにあふれ出る悲哀が増幅される。読者である私たちも円紫さんにあぁやって謎を解いてもらったから、救われるし切ない。台風接近の日の和泉さんへの「私」の対応は、育ちのよさと頭のよさを感じる。彼女にファンがいるって事、別段不思議な事じゃない。とても清潔で清冽な人間として憧れます。
文庫版42ペ−ジの「耳食(じしょく)」。「本でも絵でも音楽でも、他人に、これはいい、といわれて、それにとらわれてはいけない。それは評判を聞いて料理を食べ、闇雲においしいというようなもの、つまり耳で食べているようなものだ」。初めて聞いた言葉。感性はオリジナルのものだ。けれど私は、本の評判を聞き回ってから読んでいる。まさに、耳食。恥ずかしい。でも、時間の有効利用・リスクの軽減など合理的な面もありますよね?(言い訳)

秋の花あきのはな   読了日:2000年09月下旬