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対話篇 (新潮文庫)

対話篇 (新潮文庫)

本当に愛する人ができたら、絶対にその人の手を離してはいけない。なぜなら、離したとたんに誰よりも遠くへと行ってしまうから――。最初で最後の運命の恋、片思いの残酷な結末、薄れてゆく愛しい人の記憶。愛する者を失い、孤独に沈む者たちが語る切なくも希望に満ちたストーリーたち。真摯な対話を通して見出されてゆく真実の言葉の数々を描いた傑作中編集。


久々の金城作品。素晴らしい! 金城さんの文章、とても好きです。特に2篇目の「永遠の円環」は1ページ目からグッと引き込まれた。書き出しだけで世界がある。そこを読めるだけで幸せだった。この小説は題名通り、対話形式で進む物語である。収録されている3篇は別々の話なのだが、幾つかの型を持っている。よく知らない者同士の対話の中に、愛する事・生きる事・死ぬ事・自分の運命・偶然の出会い・谷村(教授)・大学・法学・(握)手・光そして闇など、色々なものが詰まっている。その全てが重すぎず軽すぎない、絶妙な文体のバランスで成立している。優しいだけじゃなくて、厳しいだけじゃなくて、大事な事を気づかせてくれる。単行本の装幀は著者本人で、扉画は友人である漫画家の鴨井まさねさんが描いた紫の花。細部にも愛がこもった本である。この絵は、なんて素敵なんだろうか…。読んでよかった。

  • 「恋愛小説」…自分に関わる人たちが次々に死んでしまう運命により「死神」と呼ばれた男。人との関わりを断ってきた男が一人の女性に出逢い…。「死神」から「透明人間」に名前を変え生活してきた彼の苦悩と、彼の運命を断ち切ろうとする女性の姿が胸に沁みる。いつまでも手を握り続けようとする二人の姿が愛する事の意味を教えてくれる。最初の挿話が最後に重要な意味を成す構成も好き。
  • 「永遠の円環」…自分の人生が長くはない事を悟った男は、自分の大事なものを奪った人間を殺そうと計画し、動けない自分に代わって誰かに殺人を犯してもらおうとする…。シチュエーションからは本田孝好さんの「MOMENT」を連想する。不可能犯罪が実行される様子を見ているようでミステリ的にも面白い。お互いの事を何も知らない二人が、お互いの一番大事な事を話しているのが、とてもおかしい。
  • 「花」…脳に動脈瘤があり手術しないと生が、そして手術しても記憶が奪われる可能性がある男が、弁護士の男性と東京から車で旅をする。目的地は弁護士の元妻が亡くなった鹿児島。道中、弁護士が話す元妻の話…。お互いを最愛の存在だと知りながら、すれ違ってしまった夫婦関係を思い出しながら語る弁護士。短篇集は後の作品ほどレベルが落ちると思い込んでましたが、最後まで素敵な作品でした。一番好きかも…。やはりラストは秀逸。いい本を読んだなぁと思った。

対話篇たいわへん   読了日:2005年05月28日