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SPEED (角川文庫)

SPEED (角川文庫)

頭で納得できても心が納得できなかったら、とりあえず闘ってみろよ。平凡な女子高生・佳奈子の日常は家庭教師の謎の死をきっかけに、きしんだ音を立て始める。謎を探る佳奈子の前に立ちはだかる敵。そして、偶然出会った風変わりなオチコボレ男子高校生たちに導かれ、佳奈子は歪んだ世界に敢然と立ち向かうことを決心する。大人気のザ・ゾンビーズ・シリーズ第3弾。


今回の南方たち「ザ・ゾンビーズ」の面々は高校3年生、季節はその晩秋である。あの伝説の文化祭潜入や親友の死から一ヶ月が経過した時点でのお話になっている。所々に前作までのエピソードが挿入されていて、シリーズファンなら思わずにやけてしまうだろう。特に私は「フライ・ダディ・フライ」のエピソードが挿まれているのが嬉しかった。今回はゾンビーズのメンバー内ではアギーと舜臣のキャラクターが前面に出ている感じです。特にアギーは今まで良い意味で脇役に徹してきた感じがあるけれど、その語られなかった心情が明らかになった時に好きになってしまった(笑) さすが天然ジゴロである。そのジゴロのアギー(とその母)になびかないよう堪える佳奈子の必死の葛藤が面白かった。ただ佳奈子の成長の仕方・精神構造の変化が速すぎて、どうしても序盤の佳奈子と同一人物に思えなかった。また、佳奈子の家族の話もとってつけたような感じで好きじゃない。
前半はミステリ小説のように自殺の謎を追うのだけれど、犯人(?)による自供によって簡単に事実が判明する。中盤はリベンジのための作戦会議とトレーニングといった感じで、シリーズらしくない動きの少ない展開。中〜終盤はどうしても前作までの二番煎じという感じも否めない。基本的には同じリベンジ劇であり、舜臣のトレーニングも、敵との対決も、学園祭の強襲も前に見たことあるような感じがする。更に今回は「敵」と佳奈子の因縁が浅くて、いまいちスカッと出来ない。また敵の安直な思想と、その当然の結末も普通すぎて、金城さんらしくないような気がした。これでは既存の価値観から脱却できていない気もするのだ。ゾンビーズの面々には、もっと違う世界の輝きを見せてほしいのに。あと、今回、舜臣が一冊も本を読んでない所も不満です。全体的にらしくない気が残った。

SPEED   読了日:2006年06月30日