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幸福な遊戯 (角川文庫)

幸福な遊戯 (角川文庫)

ハルオと立人と私。恋人でもなく家族でもない三人が始めた共同生活。この生活の唯一の禁止事項は「同居人同士の不純異性行為」―本当の家族が壊れてしまった私にとって、ここでの生活は奇妙に温かくて幸せなものだった。いつまでも、この居心地いい空間に浸っていたかったのに…。表題作「幸福な遊戯」(「海燕」新人文学賞受賞作)の他、2編を収録。今もっとも注目を集める作家、角田光代の原点がここにある。記念碑的デビュー作。


今最も注目を集めているらしい角田光代さん。確かに文芸誌にたくさん紹介されているし、作品は数々の賞を取り、映画化されるし注目度は高いみたい。私もそれにつられて何冊か買ってみたが、初・角田光代作品の印象はいまいち。どの短篇もバランスの崩れてしまった女性が主人公で痛くて余り好きにはなれませんでした。テーマは心の喪失・家族なのだけど、ぐっと心に沁みることはなかったです。


「幸福な遊戯」…表題作。一軒家を男女3人で共有する話。主人公は小さい頃から家族が壊れてしまった家庭に育った女性。ドマラにありそうな設定。男女混合で「不純異性行為禁止」(この呼称もどうかと思うが)なんて、それを破るための事項でしかないよ。「家族」という一度失ったものを、得ようとする。結局、男でつなぎ止めるしかない女性の必死さが痛い。
「無愁天使」…長い入院生活の後に母親が亡くなり、壊れていく家族の話。序盤はひたすら買い物の描写。家族の預金通帳の0が二桁なくなっても買い物を続ける主人公に、最初は意味が分からなかったのですが、読み進めていくうちに状況が明らかに。心の喪失・足りないお金をどうして出張風俗で埋めようとするのかは謎。女性作家のよく使う手段だと思う。げんなり。
「銭湯」…平凡という名のレールを結局、踏み外せない八重子が銭湯に行くときだけは違う自分(ヤエコ)で生きられる、という話。なりたい自分と現実の自分という分かりやすい構図(八重子とヤエコ)。誰しもこのような思いは持っているだろう、という共感はある。この3作では一番分かりやすいラストは好き。

幸福な遊戯こうふくなゆうぎ   読了日:2004年07月29日