《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

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puzzle (祥伝社文庫)

puzzle (祥伝社文庫)

学校の体育館で発見された餓死死体。高層アパートの屋上には、墜落したとしか思えない全身打撲死体。映画館の座席に腰掛けていた感電死体。コンクリートの堤防に囲まれた無機質な廃墟の島で見つかった、奇妙な遺体たち。しかも、死亡時刻も限りなく近い。偶然による事故なのか、殺人か?この謎に挑む二人の検事の、息詰まる攻防を描く驚愕のミステリー。


テーマ競作「無人島」の4作品の中の1つ。他の作品で既読なのは西澤保彦さんの『なつこ、孤島に囚われ。』近藤史恵さんの『この島でいちばん高いところ』の2作品。読んだ3作品の中では、この作品が一番面白いと思った。他2作品が正統なミステリではない中で、凝ったミステリ中編を読ませてもらった。トリック、というか結末は物議をかもしそうな感じですが、構成が素晴らしいので私はアリです。意味の分からない序盤、「無人島」の色の無い世界を創り上げた中盤、関根ファミリーの長男・春(しゅん)が答えを導き出す終盤、そして…、とグイグイと読ませる力を秘めています。短い中にも春と同僚・黒田志土(しど)の魅力が描かれているのも良い。
この作品は謎が本当に魅力的ですよね(↑の「あらすじ」参照)。落下地点は違いますが、何もないはずの上空から堕ちたような死体というのは、倉知淳さんの「日曜の夜は出たくない」の1編目と謎が似ています(真相は違います)。ちなみに、このトリックは島田荘司さんの作風のようだと思った。ダイナミックで不可解な謎、しかし視点を変えると見えてくる真相。あり得ないとも言い切れない微妙なラインのトリック。それに短い話ながらも、様々なエピソードを取り込んだ恩田さんの手腕がまた素晴らしい。春の推理はちょっと強引というか、ゴールが最初から用意されているような作為的な感じは受けましたが、それでも面白かった。
実は本書で一番驚いたのは「光文」と「昭和」の話。全く知りませんでした。新聞のスクープが歴史をも変えたかもしれない…、そう考えると背筋に寒いものが走ります。スクープした方は、値千金の記事だと思ったでしょうねぇ。歴史って怖い。

puzzle   読了日:2006年05月05日