- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/10/01
- メディア: 文庫
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千華子を人質にとられ、練はニコと名乗る少年から危険なマヤの儀式への参加を強要された。それは、少年たちがつねに背後に獰猛な獣の気配を感じながら、生き残りをかけて争う過酷なレースだった。刻一刻、過ぎてゆく時間。失意と恐怖の中で、練に残された制限時間はあとわずかしかない。脱落すれば千華子の命が…。もう後戻りできない第四巻。
3巻までは大きく分ければ、練と千華子・賢と千鶴子・日本の練の家の描写と3つのグループの行動を追ってたのですが、ついに4巻中〜終盤にきて、常に一緒にいた練と千華子がバラバラに行動を始めた。過酷なレースに強制参加させられる練も大変だが、千華子の迷走が気になる所。悪い方に進まなければいいが…。今、一番順調に行動を進めているのは賢のグループだろうか。ただ彼らの捜索地域にもう子供たちはいないという事を読者は知っているので一番歯痒いのも大人たちの行動かも。日本の家族の話は賢たちのグループにも登場。そういう一族なんだろうけど、じいちゃん凄すぎやしないか…?
そして物語の発端であるクーデターの目的も少しずつ明らかに。軍などの組織ではない、国を超えた同じ血を持つ民族の行動。このクーデターの結末も気になる所です。一体、彼らは何を目指しているのか。こちらも興味深い。
練が参加するレースは緊迫感はありますが、世界中の子供たちを集める意味が分からなかったり、ニコが参加者でありながら主催者側でもあるという事に半ば本気で怒りを感じております。身内でやれよ!と思わずにはいられない。2巻の感想でも書きましたが、限られた道具を、どう活用するのかが楽しみ。千華子のオセロは役に立たなかったけれど、使い方として面白かった。いよいよ物語も終盤です。
革命新政府は「楔が抜けるまでこの状態は続く」と発表。が、この「楔」は何を意味するのか?賢と千鶴子はヘリコプターでの捜索を開始したが困難をきわめた。一方、練は勇気と機転で「儀式」を終え、すぐさま軟禁中の千華子のもとに向かうが…。その時、国全体をさらに揺るがす、とんでもないことが起こりつつあった。面白さ最高潮の第五巻。
4巻読了(03年06月)から3年近く経っての5巻突入(06年02月)。私は練たちを3年も異国の地で彷徨わしたまま放置してたんですね…。ゴメンよ、練!
なぜ私が物語の途中で放置してたのかと自己分析をするなら、展開に戸惑ってたからでしょう。大人チームはともかく、子供チームの展開は荒唐無稽というか、やり過ぎている感じがする。詳細の分からない儀式やニコも知らない通路の話、ジェットコースターのような展開の連続はドキドキして面白いんだけど、無駄にドキドキさせられている気もするのだ。必然性に乏しい展開に思えて冷めてしまった。
その練の「儀式」も一段落し、大人たちの捜索も千鶴子の復活によって出来る限りの手を打った。残るは千華子。彼女の起こした行動も現実的解決が近いはずなのだけれど、この国には時間が無かった…。結末はどうなるんだろう!?
ここにきて新政府の目的も明らかになりましたね。分かるような分からないような新政府の理念。革命家の主張すること全てが現実で機能するかどうかは難しい所ですね。しかし新しい国家の形態としては興味深く、納得できたりもしました。そして今までのやや強行な手段の理由も明らかになりました。それは…!?
最後の最後に、またもやトンデモナイ事件が!当初の予定では全5巻だったものが全6巻に延びたわけですが、さて、あと1巻で全部が収まるのだろうか…?1〜4巻は1巻150㌻、5・6巻は200㌻と焦りを感じさせるような作りも気になる…。物語が中途半端にプツッと終わりやしないか、と私の懸念はそこに集中しています。
史上最悪の大地震と火山噴火で、練の恐怖の針は振り切れた。このまま押し潰され骨も砕け窒息するのか、千華子はいまどこにいるんだ、でも、もう何もかもが終りだ!次々、襲いかかる困難の果て、さらにこんなことが待ち受けているとは!神は二人を見捨てたのか!?兄妹は再会できるのか?そして家族は?息すらできない緊迫と感動の最終巻。
ちょっと! ちょっとやり過ぎ、恩田さん。ジェットコースターも最初は楽しいんだけど、何度も同じような構造だと恐怖に慣れるし飽きる…というのと一緒。本当は練と千華子の苦難の連続は「手に汗握る展開」なんだろうけれど、正直「またかよ!?」って思った。特に最終巻では地震や噴火で追い詰められる恐怖というよりも、ピンチの演出のために物を壊したい放題だな、という作為が感じられた。私としては物理的な崩壊よりも精神面での試練や挑戦といった感じの描写が読みたかった。ジャングル内での成長が、全てが崩壊するインフレによって台無しだ。そこらへん、冒険小説というより少年漫画のようです。それよりも、もっと話の結末・家族の再会に力を入れて欲しかった。興奮の分だけ感動があるように思うけど…。
が、一番読みたいエンディングが、なんと省略されている!「そんなわけで」「そんなこんなで」で終わってる〜! 確かにエピローグが長いと間延びするかもしれないけど、引き延ばした分だけの大きな感動を詰め込めたのに〜、と思ってしまった。最後の最後の彼の登場は好きだけれど…。終わりが呆気なさ過ぎて残念。
大体、クーデターを起こして地震や火山噴火から人々を守った理性ある人が、なんで「成人式」には民間人を巻き込んだのかしら?(一応、理由は書かれているが) 電子政府を立ち上げた国(あまりイメージできない)が、オカルトめいた予告に耳を傾けるかなぁ。全体的にチグハグな縫い目の物語でしたね。最後は帳尻合わせのために、力任せに縫い込んだって感じがします。