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球形の季節 (新潮文庫)

球形の季節 (新潮文庫)

四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。町なかでは金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた…。何かが起きていた。退屈な日常、管理された学校、眠った町。全てを裁こうとする超越的な力が、いま最後の噂を発信した! 新鋭の学園モダンホラー


デビュー2作目。早くも恩田陸の良い面も悪い面も見られる小説。恩田陸は「広げる作家」である。そして、同時に「片付けられない作家」でもあるのだった…。
本書でも序盤から素敵な物語の予感を与えてくれる。昔から地形的な理由で他と交わらなかった東北の小さな地方都市に広がる奇妙な噂。その都市伝説にも似た噂の根源を探る、個性豊かな「地歴研」メンバー。最初の50ページだけで誰の心にも浮き立つ期待を与えてくれる、そういう才能を恩田陸は間違いなく持っている。それはどんなジャンルでも同じで、恩田さんは生来のストーリーテラーである。
ただ、その読者の期待に最後まで応えているかというと、どうだろう…。
本書でも恩田陸の特徴の後者、「片付けられない」癖が垣間見られる。一応、全てに決着をつける結末・真相は用意されている。が、それは見える部分だけを片付けたという感じで、思わせ振りの描写や伏線、怪しい行動をした人物など作中で床に散らばした物は一気に押入れに押し込んでピシャッ!と仕舞い込まれてしまった。一見、掃除したかに見える部屋ではあるが、押入れはカオス状態。その扉は二度と開けられる事はない。開けた途端、雪崩を起こしてしまうから…。期待という器が大きかっただけに、湧き出てくる満足の少なさに失望してしまう。
物語を次々にスライドしていく事で、中弛み・停滞感からは脱却しているが、動き回ってばかりで地に足が着いていない印象も受ける。様々なタイプの高校生を描いているのは分かるが、主人公だと思っていたみのりや弘範が、世界の中心にいる資格がないために脇へ追いやられている感じがしてしまった。前半が現実に即して噂・都市伝説を探るものだったのに、後半からファンタジー色が一気に強くなった。堅実な前半の調査とのギャップが違和感に変わった。
噂や地方都市、そして学校が持つ「場」の力という観点は面白かったんだけど、もう少し「現実」の範囲内で収めてほしかった。もちろん本書はミステリではなくファンタジーの部類なのでお門違いの願いと言えばそうなのだが。ファンタジー部分では登場人物の裕美の「わっか」は後の「常野物語シリーズ」に通じる能力である。

球形の季節きゅうけいのきせつ   読了日:2007年04月25日