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六番目の小夜子 (新潮文庫)

六番目の小夜子 (新潮文庫)

とある地方の高校に伝わる奇妙なゲーム。三年に一度、学園祭で行われるそのゲームは、学校の運命を占えると言われていた。ゲームは一人の生徒によって行われる。その生徒は「サヨコ」と呼ばれ、十数年間、秘密裡に受け継がれていた。「六番目のサヨコ」の年、一人の転校生がやってくる。名前は津村沙世子。それは不慮の事故死を遂げた「二番目のサヨコ」と同じ名前だった。


恩田陸さんデビュー作。デビュー作には彼女の全てが詰まっていて、彼女ならではの雰囲気が既にあった。そして、それが作品の強みになる。それはまるで作中の津村小夜子のよう。その魅力と雰囲気でいつの間にかに周囲を夢中にさせる。
本編の話をしますと、おどろおどろしいホラーだと思い込んでいたけれどホラーではなかった。部分部分では怖かったが全体的には爽やかな青春小説。舞台は高校。まずマンモス高校だな、と思いました。高校とはいえ当世10クラスもある学校って少ないのでは。そして 私の高校ではなかった掲示板のクラス分け・成績発表に憧れた。もちろん、なかった物への憧れであって、あったら憎悪の対象でしょうけど…。学校・同級生という自然と共同体だという事を自覚させられますね。学校という振り返れば特別な空間だという事を、今になって自覚させてくれた小説。自分の高校時代と照らし合わせた人も多いのではないだろうか? この小説で人と時間が合わさって特別な空間になるのだ、と改めて思いました。
物語の結末は、ちょっと腑に落ちないというか尻すぼみである事は否定できない。もちろんミステリではないのですが、伏線やミスリーディングも弱い。決して嫌な結末ではなかったのですが、もっと驚きが欲しかったかな。秋がどんどん不器用に(人間味が出るともいう)なっていくのは面白かったですけど。
ちなみに作品の主人公・関根秋の父・関根多佳雄が主人公として登場する『象と耳鳴り』もあります。彼のファミリーが総登場なので是非読んでみて下さい(秋本人は出てこないし、皆さんいくぶん歳をとってます)。関根ファミリーの果てしなさと上質のミステリが待ってます。私は逆に読んでしまったのですが問題なく、むしろ家族の実情を知ってから秋を知れたのは彼の人格形成が分かって良かった。

六番目の小夜子ろくばんめのさよこ   読了日:2004年12月08日