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GOTH 僕の章 (角川文庫)

GOTH 僕の章 (角川文庫)

GOTH 夜の章 (角川文庫)

GOTH 夜の章 (角川文庫)

森野夜が拾った一冊の手帳。そこには女性がさらわれ、山奥で切り刻まれていく過程が克明に記されていた。これは、最近騒がれている連続殺人犯の日記ではないのか。もしも本物だとすれば、最新の犠牲者はまだ警察に発見されぬまま、犯行現場に立ちすくんでいるはずだ。「彼女に会いにいかない?」と森野は「僕」を誘う…。人間の残酷な面を覗きたがる悪趣味な若者たち―“GOTH”を描き第三回本格ミステリ大賞に輝いた、乙一の跳躍点というべき作品。


今更ながら、恥ずかしながらの読了。私にとって初・乙一小説。黒い、黒すぎる。暗黒乙一。しかし、ただ残酷というだけではなかった。森野の成長物語のようにも思えたし、温度の通ってないような冷徹な文章は研がれたナイフのようにゾクリとし、美しいとも思った。
本格ミステリ大賞受賞作だがミステリの醍醐味である犯人当ての要素は少なく、倒叙ミステリのように犯人を明かしている物語が多い。それでも最後には、毎回驚かされる構成・筆力が見事である。どんなトリックであれ、驚くという事がミステリの楽しさであることには変わりがない。確かに、振り返ってみれば似たようなトリックが多いのが気になるけれど、その切れ味の鋭さに感心させられた。また、最初から最後まで所々にエピソードが繋がっているのが面白い。
この主役二人組から、私は米澤穂信さんの「小市民シリーズ」の二人を連想した。アチラの方が100倍穏やかな関係だけど、周囲を欺き、己の内面を隠すという所が似ている。違うのはコチラの物語の主導権は主に僕一人にある所だろうか。
文庫版は謎の分冊。300ページ以下の分冊は、出版社の金欲の表れ、が合言葉です。

  • 「暗黒系」…↑のあらすじ参照。眉を顰めてしまうような描写から始まるが、全体としては、きちんと推理と論理のある端正なミステリになっている。僕がナイフを犯人の家から持っていったことで、この本はある意味でナイフの物語となる。
  • リストカット事件」…あらゆるモノの手首を切り取り密かにコレクションする教師・篠原。だが彼の秘密は、ある一人の生徒に露見してしまう…。犯人も、暴く側も分かっているのにラストでは緊迫する面白い物語。森野は被害者気質なのね…。
  • 「犬」…夜中、近所の犬を誘拐し、土手で決闘を繰り返す私とユカ。全てはユカに暴力を振るう「あいつ」への復讐のために…。ある一言で読者の視点が一気に反転する物語。その反転した奇妙な光景に戦慄し、恐怖と快感を同時に覚える。
  • 「記憶」…不眠症になった森野が語る、森野と死んでしまった森野の双子の妹の物語…。ミステリーランドのような話。森野が死に魅せられる理由と、アレが嫌いな理由が明らかに。この辺りから僕と森野の似て非なる性質が徐々に語られる。
  • 「土」…人間を地中に埋めることを快楽に感じる男・佐伯。ある夜、彼は森野夜を拉致し、地中に埋める…。手帳・職業の話は伏線があからさまながら衝撃的。そして、それ以上に後の展開が…。これは美しいのだろうか、狂気なのだろうか。
  • 「声」…姉を殺された夏海が、ある日、高校生の少年から渡された一本のテープ。そこには殺される直前の姉の声が…。相変わらずミスリーディングが巧みだ。この話の場合、トリックに気付いても、さほど評価に変わりはない。夏海・森野の再生の物語とも、僕の深淵への物語とも、やはりナイフの物語とも言える。

GOTH リストカット事件GOTH リストカットじけん   読了日:2006年06月17日