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丑三つ時から夜明けまで

丑三つ時から夜明けまで

闇金融の経営者・藤倉富士衛門が、自宅の離れ、地下5メートルの書斎で殺された。現場の状況が、書斎は「密室」状態だったことを示している。となると…。「やはり、犯人は幽霊以外にはありえません」!?犯人は幽霊!?奇抜な設定を巧みに生かした本格推理!


幽霊モノのミステリというと(そんなジャンルがあるのか…?)有栖川有栖さんの「幽霊刑事」を連想するのですが、あちらは捜査側に幽霊の要素が入っていたのに対して、こちらは容疑者側に幽霊がいる。といっても、幽霊だから何でもありというわけではなく一応のルールが存在し容疑者は絞られていくし、アッと言わせる犯人でもある。 主人公の「私」に一課と五課の二足のわらじを履かせて科学捜査と心霊捜査の両方を見せるのは上手い。ただ七草以外の五課の面々は完全に脇役で、主要登場人物表を載せる意味があるのかは疑問だ。
簡潔な文章が特徴だけど、良くも悪くも簡潔すぎて所々の状況説明がよく分からなかった。ダラダラと描写が続くのも嫌だけど、インパクトが薄いのも実感。
余談ですが、幽霊の存在を公表すればそれなりに犯罪を抑制が出来るとも思うのだけれど。殺しても、その霊に殺されてしまうと分かれば殺人も減るような…。漫画の「DEATH NOTE」のような話になりましたね。くわばらくわばら。

  • 「丑三つ時から夜明けまで」…表題作。あらすじ参照。「私」の立場や特徴を踏まえた構成と、読者の「幽霊が出てくる本」という先入観を上手に裏切った真相は面白い。リモコンキーを押して扉が閉まる前に走って出れば?と思うのは私だけ?
  • 「復讐」…雪の山荘の中で起きた殺人事件。現場から行方不明になった山荘のオーナーが疑われるが、周辺に逃走した足跡はない…。このトリックは科学捜査というか見た目にも分かるんじゃないかな…?某シリーズの完結編を連想した。
  • 「闇夜」…マンションの駐車場で頭頂部をナイフで刺された女性の死体が発見された。しかも凶器は何もない所から降ってきたとしか思えず…。幽霊の能力が高すぎないかな?本格ミステリというよりも漫画的だと思ってしまった作品。
  • 「幻の夏山」…米田が霊に憑依される恐れがある中、孤立した山荘に辿りつく「私」と米田。幽霊との攻防戦が始まる…。あらすじを書いてみるとかなり滅茶苦茶な展開ですね。色々と暗い話。冒頭は犯罪の凶悪化とその対策が暗い気分にさせ、結末は怖くもあり切ない暗さがあった。犯人側ばかりがご都合主義。
  • 「最後の事件」…詐欺で儲ける社長が書斎の中で撲殺される。書斎は密室状態で物理的には不可能な犯罪だが…。これも人間と霊という2種の人間を上手く利用した話。構成が良い。しかし短い割に登場人物が多いので複雑。初出の時期の問題か、五課の面々が無能だし…。トリックは「最後の事件」に相応しいもの。なるほど(→)検知器の故障は作品全体の伏線(←)だったのか…。これには感服。

丑三つ時から夜明けまでうしみつどきからよあけまで   読了日:2005年11月23日