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ROMMY (講談社文庫)

ROMMY (講談社文庫)

アンコールの大合唱に応えてROMMYがステージに上がると、スタジアムが揺れた。が、もうそんな情景を見ることはない。録音スタジオの仮眠室で彼女は息絶えていた。犯人はスタッフの中にいるのか!? 時代を疾走して逝った、天才シンガーの隠された真実とは。歌野晶午がミステリー・フロンティアに挑む問題作。


最初にシンガーの死が提示される。そしてその言葉通りにシンガーは死ぬ。
↑の「あらすじ」にある通りフロンティア(最先端)ミステリ。既存の枠では本書を捉えられない。巨大な密室と化したスタジオでの殺人、シンガーの死、そして死体解体、とミステリの必要要素は数限りなく散りばめられながらも作者はその要素で作品を飾らない。ミステリ作品の命というべく犯人探しは直線的に解決するし、更には死体解体の場面は犯人の視点から描かれている。これには困惑した。本書は一体どこへ向かうのか。一体、どこが「ミステリ」なのだろうか。
上記の通り、殺人犯は簡単に判明する。中盤までは本書の構成やそれを意図した作者の考えがさっぱり分からずにいた。事件は冒頭から発覚するのに、それ以後はROMMYの過去が過剰な程に挿入されるばかり。巨大な密室と言いながらも退場者はいるし穴もある。小手先のトリックは早々に露見し、犯人は勝手に名乗り出てしまう。この時点では全てが中途半端なミステリだった。しかし、その後のラストスパート、命を燃やし尽くす最期の輝きこそ本書の美しさであった。
本書の世界の中心に居るのは一人のシンガーである。作者は「事件」よりも「その人」を描き続ける。その人の人生を、その人の生き方を、その人の壮絶な死を。それでも本書はミステリとして成立している。事件や舞台設定は本格ミステリの様式を見せながらも、作者の狙いは意外な場所に隠れていて驚いた。この驚きこそがミステリを読む喜びでもある。気付いた時には作者の手の中であった。
最後にして最大のある事実を知ってから、これまでの文章が一気に私に押し寄せてきた。その人の苦悩、その人の孤独、その人の人生が。ジャンルで言えば本書は間違いなくミステリではあるが、謎がテーマと見事に融合して小説としても読み応えがある。特に本書が世に出た1995年と現在(2008年)の社会や法律の相違を鑑みると、ROMMYという存在が一層、悲しく映ってしまう。ROMMYから連想する人物がいる。その人物も歌手である。たった数十年の時間、人の意識の変わり方一つで、人の人生はこんなにも変わるのか、と遣り切れなさを感じた。そして10数年前のフィクションに、現実が追い着いたという感覚に囚われた。
ROMMYが実際に売れるかは微妙。特に歌詞がドイヒー。でもそこは目をつぶりましょう。小さな欠点をあげつらっていては本書の魅力も見逃してしまいます。

ROMMY 越境者の夢           えっきょうしゃのゆめ   読了日:2008年02月27日