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ジュリエットの悲鳴 (角川文庫)

ジュリエットの悲鳴 (角川文庫)

スタンダードなアリバイ・トリックからギャグ・ミステリまで、バラエティに富んだ短編とショートショート十二作品を収録し、有栖川有栖の魅力の全貌を伝える傑作ミステリ集。人気絶頂のロックシンガーの一曲に、女性の悲鳴が混じっているという不気味な噂が…。その悲鳴には切ない恋の物語が隠されていた。表題作の他、日常の周辺に潜む暗闇、人間の危うさを描く名作を所収。


本格ミステリ、シリーズモノを離れた有栖川さんの「ごった煮」短編集。ミステリの枠から出ても文章の生真面目さや遊び心、運命や人生の皮肉な結末という有栖川作品の独自の風味はしっかり利いているので安心してご賞味下さい。
ただ単刀直入、失礼千万、身も蓋もない言い方をすれば、大当たりも大外れの作品もなかった(本当に失礼千万だけど…)。大外れがないのは作品のクオリティの高さの表れとも言えるけれど、どこか既視感を常に覚えていました。
同業だからか作家が登場する作品が多い。「ごった煮」作品集なのに、似たような食材が多く使われていたのが惜しい。次の「ごった煮」では是非、「タイタンの殺人」のように自由な設定・想像力が使われた小説を食材にして欲しい。これを逆手にとって作家という職業で味付けを統一したのが『作家小説』

  • 「落とし穴」…ある秘密を握られた同僚の殺害を企てた男・苗川。彼の計画は完璧に遂行されたと思われたが…。どこまでもセコイ男が落ちた「落とし穴」の設置場所は面白い。だが、アチラ側は街中でそんな事するかな…? その点がNG。
  • 「裏切る眼」…元・不倫相手が語り始めた過去の事故の真実とは…。小説ならではの手法が鮮やかで美しい。しかし狂気と紙一重の雰囲気が怖い。
  • 「Intermission1:遠い出張」…この結末以外を投稿した人はいるのかな…?
  • 「危険な席」…乗車した特急の、一本後の同じ指定席で殺人が起こり、夫は妻に疑念を抱く…。腰が重い夫と尻の軽い妻。変な教義の宗教やめれば?
  • 「パテオ」…売れっ子作家から聞いた、ある共通の夢の話。その夢をみると小説の題材が浮かぶというが…。作家の夢、作家にとっては夢のような夢。
  • 「Intermission2:多々良探偵の失策」…どうせなら主人公の名前も同じトリック、(ネタバレ反転→)左右から読んでも同じに読める(←)にすれば良かったのに。
  • 「登竜門が多すぎる」…推理作家志望の野呂は突然、家に訪問した男にある商品を薦められ…。ワープロソフト『太郎』シリーズに笑う。意図的な皮肉ではないけれど、出版業界の皮肉になっている。これこそ「作家小説」のような作品。
  • 「Intermission3:世紀のアリバイ」…ミステリ的ショートショートのお手本。
  • 「タイタンの殺人」…近未来、土星第六惑星・タイタンでの殺人事件。容疑者は3人のエイリアンたちなのだが…。これは好きだなぁ。ルール説明が難しいけれど、異星人ミステリは本格に新しい波を起こせそう。続編希望の一編です。
  • 「Intermission4:幸運の女神」…面白いけど、前半との整合性がないような。
  • 「夜汽車は走る」…夜汽車に揺られながら、男は友との30年間を振り返る。ある秘密を抱えたまま…。有栖川さんって鉄道が好きなのね。この短編集でも2作目。この男もアリバイ作りにこんな電車を選ぶかね…。皆さん、計画が杜撰。
  • 「ジュリエットの悲鳴」…表題作。あらすじ参照。作品の雰囲気も展開もなかなか好き。最近ありませんね、この手の怖い噂。歌詞についての言及は同感です。

ジュリエットの悲鳴ジュリエットのひめい   読了日:2007年03月15日