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ロシア紅茶の謎 (講談社文庫)

ロシア紅茶の謎 (講談社文庫)

作詞家が中毒死。彼の紅茶から青酸カリが検出された。どうしてカップに毒が?表題作「ロシア紅茶の謎」を含む粒ぞろいの本格ミステリ6篇。エラリー・クイーンのひそみに倣った「国名シリーズ」第一作品集。奇怪な暗号、消えた殺人犯人に犯罪臨床学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の絶妙コンビが挑む。


火村シリーズ初短編集&国名シリーズの始まりです。火村先生のフィールドワークってのは便利ですね。事件に足を踏み込む事に無理がない。もし、そうじゃなければ火村先生の大学関係者・アリスの出版関係者がどんどん殺される、という展開しか残ってませんからね。お互いに交際範囲は狭そうだし。短篇で事件が続けておきても無理な感じがしない。第3者の事件に無理なく入れる探偵というのは、実際あまりいない気もします。本編の感想としては、登場人物の名前や事件の内容などが出来合いに感じてなりません。結末から作ったというのが分かってしまう物がいくつか。推理が論理的というよりも偶然、という印象が強く残ってしまった。

  • 「動物園の暗号」…動物園内で殺された男性が手に握っていた紙には、動物の名前がぎっしり書かれていた。この手の暗号は自分だけしか楽しくないですよね。もし他の人が犯人だったらどうするんだ、という突っ込みを入れました。
  • 「屋根裏の散歩者」…アパートの管理人が殺された。彼には変な趣味があり、その行動を記した日記が犯人に繋がる…暗号の解読です。けれど真面目に考えれば考えるほど結末に唖然としますよ。でも毎日同じって事はないと思う。
  • 「赤い稲妻」…妻と愛人を1時間も経たずに相次いで亡くした男。偶然か必然か?ミステリの基本ですね。驚きました。駒の位置を変えるとこういう真相が見えるものか、と。決め手の部分はありえない、と思ってしまいますが。
  • 「ルーンの導き」…海外出版社に勤める中国系アメリカ人が殺された。彼の手にはルーン文字の刻まれた石が4つ。犯人の限定の仕方が巧い、というより仕組まれてる、と思う。都合のよい設定をしてるな、と思わずにはいられません。
  • 「ロシア紅茶の謎」…あらすじ(↑)参照。表題作。これは無理がなくていい。毒殺という古典的方法ながら、衆人監視という状況。火村さんが一度挫折しかけた所にワトソン役のアリスが助け舟を出す。アリスの面目躍如ってのが好き。
  • 八角形の罠」…アリスが脚本を書いた舞台の練習中に毒殺事件が起こる。推理小説と小さい劇団の舞台というのはマッチしますね。舞台上に急に死体が現れるってのも劇的だし。『ペルシャ猫の謎』でも書かれているパターンですね。

ロシア紅茶の謎ロシアこうちゃのなぞ   読了日:2001年11月01日