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十角館の殺人 (講談社文庫)

十角館の殺人 (講談社文庫)

半年前、凄惨な四重殺人の起きた九州の孤島に、大学ミステリ研究会の七人が訪れる。島に建つ奇妙な建物「十角館」で彼らを待ち受けていた、恐るべき連続殺人の罠。生き残るのは誰か?犯人は誰なのか?鮮烈なトリックとどんでん返しで推理ファンを唸らせた新鋭のデビュー作品。


冒頭から海外ミステリ作家の名前でお互いを呼んでいることに、まず二の足を踏んでしまった。ミステリ濃度の高さの証明なのかもしれないが、海外人物名の苦手な私には誰が誰だか判別がつかない、という、ある意味で衝撃的展開で始まった館シリーズです。一度目の読書では人物関係がよく分からなかったので、50ページほど進んで断念したのですが、二度目のチャレンジでは割とサクサクと読むことが出来ました。やっぱり人物関係や誰が誰の名前を語っていたのか、多少混乱してしまった。
ただとっても自分が残念なのは、犯人が判明する場面の最も重要な台詞を天性の読解力不足ですっと飛ばした、ということ。次のページでは犯人が明らかになっているのに、私にはどうして判明したかが分からなかった、という作者にとって最悪な読者…。ミステリの醍醐味はやっぱり犯人が明かされる場面なので、そこはすごく残念(己のあまりのバカさ加減に)。それでも最後の展開は驚きました。ミステリのある重要な手順が省略されてるのだ。そういう意味でも、やはり新しい作品だったのだなと登場から10年以上経ち読んだ私は思いました。
(追記)最近、ある有名な海外ミステリを読みました。するとその作品の結末とこの作品のエピローグが(意図的に)酷似させてあった。この作品はどこまでも既存のミステリに敬意を表した、もしくは若い作家が書いた(良い意味で)青臭い作品なのだな、と思った。終わり方に感動しただけに、その分ちょっとガッカリしてしまった。

十角館の殺人じゅっかくかんのさつじん   読了日:2003年06月01日