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(P[あ]1-1)The MANZAI1 (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[あ]1-1)The MANZAI1 (ポプラ文庫ピュアフル)

やたらと暑い十月最初の木曜日。転校生の瀬田歩は、サッカー部の次期キャプテンと噂される秋本貴史に呼びだされた。貴史とほとんど口をきいたことのない歩には、その理由がわからない。放課後の駐輪場で「なぐられっぱなしだけはいやだ」と唇をかみしめる歩。ところが、彼の耳に入ってきたのは、思ってもみなかった貴史からの申し出だった…。対照的なキャラクターの中学生が出会い、葛藤するさまを、繊細かつユーモラスに描いた青春小説シリーズ第一弾、待望の文庫化。巻末に、直木賞作家・重松清と著者による特別対談を収録。


なぜか、あさのさんの代表作である『バッテリー』ではなく、本書が私の「あさのあつこ」の第一冊目となった。というのも、1ページ目に目を通したら最後、この本に「読まされて」しまったのだ。タイトル通り、漫才のようにテンポの良い展開と優しい登場人物たち、読後は晴れ晴れとして気持ちになれる小説でした。
タイトルが「The MANZAI(漫才)」というからには、もちろん漫才をする話である。ただ、文章で漫才をするというのは非常にハードルが高い。結論から言うと、漫才部分はそんなに面白くない。漫才のネタ発表の場面は短いし、身内ネタが多いので笑う事は少ない。ただ、漫才を発表した彼らや、体育館の中に流れた空気は十分に伝わってきた。中学生の彼らが一つの舞台を作り上げていく様子、友情を深めていく様子は読んでいて気持ちがいい。中学生たちの精一杯の文化祭、でも大人から見ればやっぱり「中学生」の漫才の発表がとてもリアルに思えた。
短い話の中に、かなりの登場人物がいる。しかし、その一人一人が個性を持ち、輝きを持っている。ほとんど混同することなく読めるのは、あさのさんの筆力だろう。その中でも主人公の一人である歩の苦悩は特に繊細に描かれている。教師の不用意な一言から学校に行けなくなってしまった歩。奇しくも、(中学校)教師の問題が取り沙汰されている、この時期に読んだので、この場面は非常に胸が痛かった。全ての教師が生徒に優しく手を差し伸べてくれる訳ではない。それどころか教師から手を拒んでしまう事もある…。
漫才のコンビと恋人のカップルが混同しているような場面や、女装する場面があって、いかにも女性側から見た「少年」といった感じもした。しかし、その女性からの視点が、心の機微を描き、爽やかな感動を生んでいるのだとも思う。「そういう方面」に妄想を楽しむ人にも人気の作品なんじゃないかな?、なんて…(笑)
余談:1999年スタート(多分)なので、出てくる芸能人・歌手の名前が古い。芸能人の人気は短いものですね…。

The MANZAI<1>   読了日:2006年10月20日