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壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

旧幕府軍の敗退がほぼ決した鳥羽伏見の戦。大坂城からはすでに火の手が上がっていた。そんな夜更けに、満身創痍の侍、吉村貫一郎が北浜の南部藩蔵屋敷にたどり着いた。脱藩し、新選組隊士となった吉村に手を差し伸べるものはいない。旧友、大野次郎右衛門は冷酷に切腹を命じる―。壬生浪と呼ばれた新選組にあってただひとり「義」を貫いた吉村貫一郎の生涯。構想20年、著者初の時代小説。


一人の新選組隊士を中心に添えて、彼に関わった様々な人の話を聞き、最期の武士であった彼の生き様に焦点を当て、徳川幕府末期・明治の黎明の日本の騒乱(争乱?)を描く。 構成は、吉村貫一郎の最期の場面と50年後の大正の時代に新聞記者が新選組関係者や吉村貫一郎に縁のある者の元を訪ね歩く場面が交互に描かれている。この構成が、新撰組の設立から活躍・衰退まで描け、また明治・大正という時代の日本の変遷も分かるという抜群の効果をもたらしている。
まだ上巻なので結末は分かりません。しかし率直な感想は、武士道とはかくも面倒くさいものかと思った。多分(必ずや)語弊はあるだろうが、会社の談合を想う。接待して欲しいとは決して自分の口からは語らない部長、みたいな。やっぱり違うか…?兎も角も率直に物を言えない時代であったんだな、と思う。時代というのは残酷だ。越えられない身分の差があった時代、才のある者がその利を活かせないというのは輪をかけた不幸である。その時代に生まれた吉村貫一郎という男の悲嘆を見事に描いています。それは新撰組という組織も同じで、時代に翻弄された組織の運命を歯痒く思う。坂本竜馬暗殺に関しての記述もあって興味深い。NHK大河「新選組!」ではあの人になっていた暗殺の下手人も、この作品では意外なあの人になっていたりで、どちらの解釈にも納得してしまう。いつか決定的な解決は訪れるのだろうか?私としては、ある一つの結末を予想するのですが、果たして私の思った通りの終結を迎えるのか。いざ下巻へ。

壬生義士伝(上)みぶぎしでん   読了日:2004年12月20日