
鈴木 ジュリエッタ(すずき ジュリエッタ)
神様はじめました(かみさまはじめました)
第07巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★★(6点)
香夜子(かやこ)の件で神様に異議申し立てをする為、”神議り(かみはかり)”に出る事を決めた奈々生(ななみ)。そこで出雲へ乗り込む前の息抜きに、奈々生は巴衛(ともえ)との観覧車デートを計画♡ しかし、当日、巴衛の部屋で女物のかんざしを見つけてしまい!? いよいよ始まる出雲編★
簡潔完結感想文
- 試験編と出雲編の間に日常回を挿入。日常回は お金の使い方と出所が やっぱり気になる。
- 奈々生は巴衛の理不尽な目に遭うのが嫌だから留守番にする。それが愛だと気づかない巴衛。
- 巴衛のいない一週間は遠距離恋愛か武者修行か。悪羅王というネーミングセンスが気になる。
ヒロインの浄化技は1つのエピソードで1回まで、の 7巻。
いよいよ神議り(かみはかり)が始まり神様オールスターズの出演で画面が豪華になっている(作画が大変そうだけど)。元々個性豊かな日本の神々と本書の相性はとても良い。


またヒーロー・巴衛(ともえ)の2方向の過去が気になるところ。1つは恋愛面。雪路(ゆきじ)という元カノのような存在に奈々生(ななお)
は やきもきする。そして もう1つがラスボス的存在である悪羅王(あくらおう)との関係。今はまだ再会していない2人が遭遇した時、巴衛は過去のような野狐(やこ)の性質を取り戻してしまうのか。過去という時間軸に焦点が集まり、それが解決しない限り恋愛も平和も訪れないようだ。
今回は『6巻』に引き続き奈々生の成長が続く。ずっと奈々生を助けてきた巴衛と距離を作ることで、奈々生単独の行動が自然と増える。出雲で神様の会議、神議り(かみはかり)に出席するはずが遠距離恋愛と武者修行をするエピソードになっている。
面白いのは奈々生の方は不慣れなことと予想外の展開の連続で巴衛のことを思い出さないのに、巴衛は奈々生のことを思い出している。直接的な交流は遊園地デート回ぐらいしかないのだけど、初めて遠距離恋愛状態になったからこそ描ける巴衛の心情の変化があって、それが読者の承認欲求を満たしてくれる。
奈々生が出雲に行く目的が神様への謝罪要求で、彼女に動機があるから様々なことに巻き込まれても不自然じゃない。そして霧仁(きりひと)=悪羅王というラスボスが設定され、彼が暗躍することで物語に奥行きが生まれる。奈々生は作中の二大妖怪である巴衛の他に霧仁とも交流することで物語の中心人物であり続ける。現段階では奈々生は事情を知らずに人間の姿をした霧仁と知り合っているだけで、彼女が霧仁の正体を知るなど今後の展開に期待が持てる。そして今回は巴衛を切り離すことで霧仁や悪羅王に巴衛がノータッチの状態が続く。ここは長編として面白くなるような お話作りになっていて素直に上手いと思った。
また悪羅王という絶対悪の存在によって、過去に傍若無人な行動をしていたはずの巴衛が少しずつ漂白されている。悪羅王に比べると巴衛は常識的で倫理観がある。だから彼の悪行は許される、または無かったことに出来るという方向性に作者は持っていきたいようだ。これは現代物だと手の付けられなかったヤンキーとか俺様ヒーローが段々と丸くなって一般人になっていくのと同じ感覚だろうか。極端な性格を演出することで読者の興味を引いてきたのに、いつのまにかにマイルドな性格に変化させて軟着陸を試みるようだ。
『6巻』の式神育成で奈々生は戦うヒロインの手段として退魔結界という浄化技を習得した。今回も元神様である存在を一瞬で退散させるほどの威力を発揮しているけれど、この浄化技は便利すぎて、使ってしまうと問題が一瞬で解決してしまうので、それを使うのは ここ一番の時に制限される。この辺は戦うヒロインモノと同じだ。その内、巴衛が妖怪を足止めし、最後に奈々生が浄化するような共闘が見られる日は来るのだろうか。2人でのバトルシーンにも期待してしまう。
冒頭は『6巻』で出番が極端に少なかった瑞希(みずき)の話。瑞希は神使になったものの、学校に登校させてもらえないし、奈々生は出雲問題に かかりっきり で巴衛との格差を感じるばかり。そこで人間社会に適応しているクラマに倣おうとするがクラマに辿り着く前に人間社会に揉まれて疲弊する。子供の おつかい のように お金の遣り繰りを失敗したところに どうにかクラマと遭遇する。
社という清浄な場所で生きてきた瑞希には人間社会は毒。けれど人間社会の中で人々は辛苦を舐めながらも暮らしていることを知り、人の強さを学ぶ。今回 登場した人の後日談のようなエピソードが作中にあれば嬉しいんだけど、きっと そういう描写はない。
巴衛と遊園地デートを目論んでいた奈々生(瑞希が賽銭を使い込んだのに どこから お金が湧いてくるのか)。しかしデートに喜び勇んでいた奈々生は、巴衛の持ち物から女物の かんざし を発見してしまい気に病む。奈々生は何度か過去を視たり体験したことで巴衛に特別な人間の女性・雪路(ゆきじ)がいたことを知っている。だから蓋をしても嫉妬心が溢れ出してしまい、ついに雪路の名前を出す。しかし巴衛は雪路を知らないと言い張り、奈々生は それが巴衛の嘘だと決めつけ彼を糾弾する。ヒステリックというか劇場型というか、この日の奈々生は精神的に不安的すぎる。
逃亡し、一人で観覧車に乗っていると巴衛が見つけてくれ、奈々生の願いが叶う。そして巴衛が持っていた かんざし は『5巻』の社の夏祭りの際に彼が奈々生のために買った物だと判明する。大暴れして自分だけが救われて、奈々生が嫌な方の少女漫画ヒロインになっている。


出雲へ行くメンバーを決める回。瑞希は過去にヨノモリ社の神使として出雲に行った経験があるが、元・野狐(やこ)の巴衛は嫌がらせを避けるため参加したことがない。なので巴衛と瑞希は将棋によって どちらが同行するかを決める。
奈々生が自分の飛行機チケットを購入するために単独行動をすると街中で神籍を剥奪された「神堕ち(かみおち)」に追われる。奈々生に危険を報せるのは式神・マモルくんの役割。逃げ込んだ公園で奈々生は1人の男性に出会い、彼が巻き込まれたことで新しく得た退魔結界の力を発動させる。低俗妖怪並みに堕ちたとはいえ神を退けるだけの力なのか。この時の男性こそ、香夜子(かやこ)が慕う霧仁(きりひと)なのだけど、奈々生は彼との初遭遇を まだ認知していない。香夜子が霊視した霧仁の死が覆ったのは、霧仁の身体の中に「悪羅王(あくらおう)」の魂が入ったから ということも判明する。
今回の騒動で、元人間である土地神の自分が出雲では蔑視されることを痛感した奈々生は巴衛の出自も問題になり、それが心苦しいと巴衛を留守番させる。巴衛は奈々生に化けて学校生活を送る。巴衛は奈々生が異性である瑞希と一週間旅行に行くことが解せない。それが独占欲だということに巴衛も気が付き始めている。
出雲への出立の際、沼皇女(ぬまのひめみこ)が見送りに来てくれ、小太郎(こたろう)と上手くやっていることが伝えられる。そういえば沼皇女が人間の姿になったのは巴衛の変化の術なのだけど、その後 登場した時の沼皇女は本来の姿だったように思う。けれど今回は人間バージョン。設定が杜撰な気がする。沼皇女と小太郎の関係は、奈々生の縁結びの神としての実例(かつ唯一の例)。奈々生は沼皇女に自信を貰い、出雲に旅立つ。
奈々生が向かうのは出雲大社(いずものおおやしろ)。神議り(かみはかり)の責任者である主祭神は大国主(おおくにぬし)。瑞希に案内されるはずが、移動手段の彼の白蛇から落下し、奈々生は単独行動となる。早速、戦神(いくさがみ)という神から実力を試されるが式神も道具も白蛇に置いてきたので失敗し冷遇される。瑞希は神使のため奈々生と同行しない限り神議りの会場に入れない。なので奈々生は会場に行く道も分からず迷子になる。そんな中、一匹の蝶に導かれ奈々生は会場の入り口に立つ。そして神にも得手不得手があり、奈々生には奈々生にしか持てない視点があることを教えられる。普通に考えると これはミカゲなのだけど、神の座を譲ったミカゲが どうして ここに入ってこれているのかが謎になる。まぁ奈々生も正規の入場方法ではなく落下で入ったのだから、侵入方法は いくらでもありそうだけど。
会場で再び戦神から踵を返すように脅迫されるが、奈々生は胸を張る。また乙比古(おとひこ)のアシストと主宰者である大国主神(おおくにぬしのかみ)の鶴の一声で奈々生への異議は抑制される。乙比古と共に瑞希とも再会する。奈々生は大国主神から神議りの前に黄泉国(よみのくに)の入口である黄泉比良坂(よもつひらさか)に行くことを命じられる。
黄泉比良坂は神議りの期間中、門番の神が不在になり妖に狙われる。特に今年は門が開いてしまう緊急事態。神々は穢れを嫌うため、俗世で生きる奈々生に その役目が回ってきた。損な役回りだけれど、奈々生は乙比古を使って自分と香夜子を競わせたのが大国主神だと知って、この件を片付ける代わりに香夜子への謝罪を約束させる。
乙比古が黄泉比良坂への同行者となり、瑞希は奈々生に命じられて自分を案内したミカゲかもしれない存在の捜索をすることになる。
今年の妖の襲来が激しかったのは霧仁が主導しているから。彼は黄泉国にある悪羅王(自分)の不死身の肉体を入手するために妖を扇動して騒ぎを起こす。
そこに奈々生と乙比古が到着。奈々生は浄化技である退魔結界を発動させようとするが式神・マモル君はダウン。そこに妖が霧仁を人質に取り動きを制限。奈々生には人間にしか見えない霧仁を救出するために、奈々生は妖が飛び込んだ黄泉国に自分も突入する。
奈々生の身代わり生活を巴衛は最初こそ言いつけを守っていたけれど、その内、奈々生がいない自由を思い出す。『1巻』で奈々生が土地神になることを受け入れられず放蕩生活を送ったようなことを繰り返すが、今回は異世界で遊んでも楽しくない。これが巴衛の中の奈々生の存在の大きさを表している。
悪羅王という存在が創出されて巴衛に過去が出来たので、異世界での2人の悪友の様子が回想される。そして悪羅王という本物の悪が出てきたことで、巴衛の悪行が随分と薄まっている。「一方的な殺戮は好かん」と言っていたけど『1巻』では巴衛も一方的に殺戮をしている。ミカゲによって牙を抜かれて丸くなったと描いてあるけれど、矛盾もある。連載化で出てきた仕方のない矛盾でもあるんだけれど。






