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少女漫画と小説の感想ブログです

揺れ動く三角関係は、少女漫画として だいたい正しい。けどヒロインは ほぼほぼビッチ。

藤原くんはだいたい正しい(6) (フラワーコミックス)
ヒナチなお
藤原くんはだいたい正しい(ふじわらくんはだいたいただしい)
第06巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

王子たちの争い激化!?大波乱の修学旅行編。VSモードのふたりの王子と修学旅行は波乱だらけ!? ヒツジへの気持ちを確かめたいと、白滝(しろたき)に宣戦布告した藤原(ふじわら)。険悪ムードのふたりの心は露知らず、修学旅行を楽しもうとするヒツジだけど、藤原と白滝、それぞれとのラブハプニング発生で、気持ちは大混乱!!? ゆるキャラ女子×悟り系男子のLOVEレッスン、第6巻!

簡潔完結感想文

  • 修学旅行編。彼氏・白滝まで たどりつく前に必ず藤原を経由してしまう。
  • 諦めかけたアクセサリ=愛の結晶を拾ったのはお前だから責任とれよなッ!
  • 彼氏に黙って他の男と遊園地。ねぇ 逆の立場だったら どう思うの??

の悩みもトラウマも 私が救ってみせる、の 6巻。

『6巻』は藤原(ふじわら)の恋心の確定とトラウマの完全解消というヒーローの復帰までが描かれ、その彼を悩みや苦しみから救うのが いつもヒロイン・ヒツジだということも描かれる。
だが一方でヒロインが どれだけ浮気者かも描かれている。特に最後の、交際中の白滝(しろたき)に内緒で遊園地に行く流れは理解に苦しむ。一応は白滝のためというエクスキューズが用意されているが説得力に欠ける。

藤原にとってヒツジがどれだけ特別な人かは読者にも分かる。藤原にトラウマを克服させることが出来るのは この世でヒツジしかいないだろう。彼にとってヒツジが聖女のように見えるのは分かるのだが、では白滝にとって彼女として何点かを考えた時に評価は一転する。それは読者にとっても同じ。失恋で苦しむ自分を救ってくれた白滝に対して不誠実で、自分が白滝を苦しめていることに無自覚でいる。2人の学校トップ2から無自覚に愛されることは読者にとって得しかないが、こうやってデリカシーなく無自覚に人を傷つけるヒツジの様子は見たくない。そもそも白滝と交際する理由が弱く、それを意固地になって継続する理由もない。ヒツジは白滝個人ではなく彼氏という欲しかったものを手に入れて、自分を甘やかしてくれる甘い香りの男性に陶酔しているだけ。白滝を便利に使いながら、心は藤原に傾く。これをビッチと言わず何と言うのか。

白滝と交際しないまま、ヒツジが自分の魅力で藤原を振り向かせる話なら どんだけ良かったか。

になるのは世界の狭さ。『6巻』は最大の学校イベント・修学旅行編でもあるのだが、ハレの日の特別感はなく、3人で街中やホテルをウロチョロしているだけのように見えてしまう。カレンも岩田(いわた)も作品から排除されて この世界はいよいよ3人しかいなくなったのかと思うぐらい登場人物が少ない。

私はヒツジが生徒会に入ったことで、彼女の平凡な日常が輝くのかと期待したのだが、生徒会って巡回しかしないの、ってぐらい活動が単調なのが残念だった。これまでの体育祭や文化祭、そして この修学旅行も時間をかけて準備してきた割に、それが他生徒から好評だったとか大盛り上がりして終わるとか そういう描写が一切ない。全て途中から恋愛イベントに照準が合わさってしまい、ヒツジの心しか描かれなくなる。もっと生徒会活動によって学校生活の達成感とか青春を感じさせてくれるものだと思っていただけに落胆が大きい。

またヒツジがマスコットから女性扱い=自立が描かれるのかと思ったら、ただのモテモテヒロインになったのも残念だ。ちょっとヒリヒリするぐらい現実に向き合って折り合って成長していくのかと思ったら、愛されるだけの簡単な お仕事で終わっている。藤原に傷つけられたことはあったが、そもそも彼女が戦うのは自分をキャラに押し込めようとする周囲の外圧だと思っていた。マスコット扱いが ただの治外法権でしかないのだ。その意味ではカレンの方が自分を不当に苦しめる人たちと戦っている気がする。


よいよ2日後に近づく修学旅行。ヒツジは同級生たちから修学旅行で学年合同で行うイベントを企画してくれと言われて安請け合いする。求められたキャラを演じ続けた時と同様に、自分に頼まれたことは引き受けてしまうのは彼女の美点かつ欠点で、ヒツジが何も成長していないように感じてしまう。

久々に復帰の生徒会活動にヒツジは緊張する。なぜなら また藤原に無視される苦しみを味わうのではないかと思っていたから。だが この時点で藤原はヒツジによってトラウマを克服しており、もうヒツジを遠ざける必要性がないから、以前のようにヒツジに冷たくも優しい。だからヒツジはご機嫌である。

岩田を彼女とのデートと言う口実で物語から排除して、三角関係の女1男2で買い物に出掛ける。藤原がヒツジに接近してようと思ってるとは思わない無自覚ヒロインなので、自分が両手に花であることを知らない。それを知っているのは白滝だけ。だから彼は藤原をヒツジから出来るだけ遠ざける。そしてヒツジに出来るだけ近づく(身体的に)。そうして異性との接近という一点で彼女をドキドキさせる。それは異性であればよく白滝であるからという理由ではあまりない。

逆にヒツジは藤原からの連絡一つで心が乱される。身体的接触をしなくても藤原はヒツジの心に触れてくる。それを思い知ったヒツジは今度は彼女の方から藤原を遠ざけようとする。じゃあ白滝との交際をやめれば?と思ってしまう。入籍した訳でもなく義務でもないんだから、ダラダラと交際を続ける意味はない。


滝が奮闘してもヒツジと藤原との接触はゼロではなく、その度に白滝は不安になる。だから白滝は修学旅行の夜にヒツジと2人きりになろうと計画する。しかし、これ男女が逆だったら、もう××ちゃんとは話さないで!とヒロインが怒っているところである。自分がやられたら嫌なことを簡単にやるのがヒロインという女の罪である。

本書で一番 切ないのは一途な恋をしているのに全く報われる気配のない白滝だろう。

だが白滝との約束を前にしてヒツジは藤原と宿泊先のホテルのリネン室に閉じ込められてしまう。その際、藤原はスマホを持ち歩いていたのだが、ヒツジが白滝との待ち合わせに遅れそうと知り、彼は そのことをヒツジに秘密にする。ってか なんでヒツジがスマホを持っていないんだ、という話である。
その密室内で藤原が決して弟には抱かない感情をヒツジに抱いていることを思い知り、彼の中で混同している部分のあった弟とヒツジが完全に分離する。これは藤原が完全にヒツジに恋に落ちた瞬間である。それに気づいた藤原はスマホを取り出し、この状況から脱出する。頭の混乱から逃れたいのだろうか。閉じ込められるのも脱出するのも不自然な流れに感じた。

その後、バカ正直なヒツジによって、彼女が遅れて到着した理由に藤原が関係していることを知らされた白滝は いよいよキスという手段に出ようとする。キスが出来るか出来ないか、それは少女漫画における本命かどうかの試金石である。


学旅行先での生徒会の見回りの最中に、藤原が私物を落としたことで その捜索にあたる。藤原は諦めようとしたのだが、ヒツジが藤原にとって大切な物だと訴えるので全員で協力して捜すことになる。
確かにそれは大事な物で、藤原が地元でヒツジのために買ったヘアピンだった。少女漫画においてアクセサリは愛の結晶。それは藤原のヒツジの想いそのもので、それを旅行先の京都にまで持っていき、そして そこで捨てきれないのが藤原の心そのものである。それをヒツジの提言で捜すことも、そして彼女が発見することにも意味がある。彼女こそ藤原の恋心を守ったのだ。

だから藤原は紙袋に入ったアクセサリをヒツジに見せ、そのままプレゼントしようとする。ヒツジは藤原が自分の見ていた物を買ってくれたこと、それをくれたことに胸が苦しくなる。喜び浮かれそうになるが、白滝の顔が浮かび自重し、アクセサリは大事にするが学校では身につけないと断る。実質的には両想いなのに、互いに それを確かめられない。

藤原に大いに傾きそうな心に けり をつけるため、白滝に安心感を与えるためヒツジはキスという手段を考える。キスは誠実さを示すために するものではないのに…。ヒツジはホテルの廊下で発見した「彼」の後ろ姿に話し掛け、キスの準備が整ったことを伝える。しかし それは白滝の服を着た藤原だった。2人の交際の進展に自分の叶わない恋心を思い知った藤原はヒツジにキスをしてしまう。


のキスの意味をヒツジは分からない。近づいたり拒絶したり、藤原に意味もなく振り回されると感じる。その混乱で その夜は白滝との約束の場所に行けなかったヒツジ。

ヒツジの様子がおかしいことは白滝には一目瞭然。白滝は彼女と藤原の間に何かあったと藤原を問い詰める。だが正直に話そうとする藤原の話が自分の聞きたくない、許せない話だと察した白滝は彼に怒りをぶつける。それでも藤原は自分が確かにヒツジを好きだと言うことを白滝に伝える。そんな藤原に白滝は言葉の鎖で彼の行動を封じる。

生徒会によって急遽 企画された肝試し。だが夜の階段は弟の事故のことを思い出して藤原の精神に過負荷を与えていた。その上 気づいたばかりの恋心も袋小路からの出発で悩める藤原の前にヒツジが現れる。彼女は藤原の具合の悪さを見抜いていた。自分のことを気遣ってくれるヒツジを藤原は抱きしめるが、ヒツジは彼に振り回されたくないから藤原の身体を押し返す。理由もなく接触されるのは苦しいと訴えるヒツジに藤原は その理由を話そうとするが、ここで白滝が登場する。何だか同じことの繰り返しのように感じられる。

ってか生徒会の3人が集合して肝試しは成立しているのかが気になる。なんだか どのイベントも熱気や達成感が描かれていない。学校イベントを利用した恋愛のハプニングを描きたいだけで、学校イベントが中途半端な扱いになっている。


乱の修学旅行が終わり、その週末に藤原はヒツジに全てを話そうとする。彼の真意を知りたいヒツジは白滝のことが頭に浮かびつつも、その誘いに乗る。せめて白滝に一言 断ればいいのに、軽率に行動するのが この女である。
一方で藤原はヒツジを誘ったものの、本心を全て言うか迷っていた。今 気持ちを伝えてもヒツジは白滝の彼女として行動し、彼女から距離を置かれるかもしれない。それなら誤魔化したほうが得策かと藤原は考えを巡らす。

ヒツジは藤原は遊園地に呼び出す。この日までの無料券を持っていて、その中で開催されている お菓子イベントに白滝へのプレゼントを買おうとしたのだった。じゃあ藤原に会うのを前後にずらすとか、断るとかすればいいのに。常に一方の男の前で もう1人の話題を出すデリカシーのない女にしか見えない。作品的に遊園地を舞台にしたかっただけだろう。どうにも話の流れが上手くない。


園地は藤原にとって弟との最後の約束の場所。そこで弟と同じぐらいの年齢の子供たちを見て藤原は再びトラウマに足を引っ張られる。彼にとって明るい感情を抱くことは自分だけが生きている罪悪感を引き出させる。

どうしても弟の死の全責任を負ってしまう藤原の心を解放するためにヒツジが考えたのは弟に聞いてみるという計画だった。そこで乗るのが空に一番 近づく観覧車。少女漫画の必須アトラクションである。

そのヒツジの行動が藤原の苦しみを救うことになる。これは直接ヒツジが何かをした訳ではなく、藤原の悔恨に対してヒツジは自分が無力なことを理解しながら、それでも彼女の行動すべてが反響することで藤原の心の奥に触れた。この間接的な心の触れ方が良い。結局 どう言葉を重ねても これは藤原自身が克服すべき問題で、ヒツジが必死になればなるほど藤原は介入を拒むだろう(中学時代のカレンのように)。だから藤原の自己回復に任せるというのが正解で、作品としても出口のない問題に挑み続けるのではなく、割とあっさりと解決してくれるのが良かった。トラウマは扱い方を間違えると作品全体に悪影響を及ぼす劇薬だから、ヒーローが勝手に立ち直るぐらいが丁度良い。

藤原の心の解放の証拠に、彼はずっと流せなかった涙を流す。弟の鼓動が止まった時も、葬式の時も泣けなかった藤原は ヒツジによって涙を流せるようになった。こうして本当の自分になった藤原はヒツジへの気持ちを誤魔化すことなど出来ず、ヒツジに自分から溢れ出る想いを告げる。ここはヒツジからの告白(『4巻』)と同じで、自分でもコントロール出来ない湧き上がる想いを感じられ、彼らの対照性が感じられて大変良かった。

藤原くんは一緒にいるだけで笑顔になっちゃう人といればいいんだ!!(私みたいな♥)

藤原くんはだいたい正しい(5) (フラワーコミックス)
ヒナチなお
藤原くんはだいたい正しい(ふじわらくんはだいたいただしい)
第05巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

W王子たちとの三角関係は、さらに複雑化? あざと、かわいい王子・白滝と罰ゲームでカレカノに…!!? 藤原(ふじわら)を忘れられない想いを抱えたまま、その気持ちを吹っ切ろうと、白滝(しろたき)とつき合うことに決めたヒツジ。初めての“彼氏”、白滝からの甘々攻撃に少しずつ前を向いていくヒツジだけど、そんな中、カレンが藤原に急接近し始めて――?? 恋は四角関係に突入で、ぐるぐる急回転!? ゆるキャラ女子×悟り系男子のLOVEレッスン、第5巻!

簡潔完結感想文

  • 私事で生徒会の仕事は放棄しかけたが、その分 ヒロインとして輝く一冊。
  • トラウマに引きずられるばかりの藤原を叱咤し、彼を呪縛から解放する。
  • それぞれに覚醒した王子様の争いにヒロインは無自覚、という夢展開。

切りヒロインと 裏切らないのに振られる美女、の 5巻。

この『5巻』でヒロイン・ヒツジが無自覚なまま最強の聖女パワーを発揮して、藤原(ふじわら)の心に平和を取り戻す。少女漫画版「俺TUEEE」である。遊びのつもりだった白滝(しろたき)は本気でヒツジの心が欲しくなり、そして藤原もトラウマ解消による恋愛解禁でヒツジへの接近を自分に許可する。こうして開幕は期待感で いっぱいだった この話は、典型的な2人の王子による冴えないヒロインの奪い合いに落ち着いてしまった。少女漫画としては正しい手法だと思うが、作者の絵柄や性格なら もっとコミカルな話の方が合っているような気がする。おまけ漫画の飄々とした感じを作中に出すような話が読みたい。あと単純に中盤の展開が咲坂伊緒さん『アオハライド』に似ている。そして本書の方が後発で、そして劣化版だという事実が悲しい。
どうにも友情も恋愛もエピソードが弱すぎる。特にヒツジとカレンの謎の友情に続いて、藤原と白滝の強すぎる友情に疑問を抱いた。2人はどうして こんなに自分の恋心を腹を割って話すのかが読者には理解できない。そして白滝は藤原の心の歪みを理解しているのだから、そこまでの友情があるのなら彼が藤原の心を正すべきなのではないか。なぜ これまでずっと放置したのか理解しかねる。


を抜くと感想が愚痴ばかりになってしまうので、最初に良かった点を列挙。

1つ目は、聞こえる言葉と見える顔色の違い。白滝との交際を藤原から祝福されるというヒツジ悲痛な場面で、ヒツジは藤原に頭を押さえつけられて下を向かされていたため、藤原の表情が見えていない。実は この時、藤原は苦々しい顔をしていた。それをヒツジは目撃できず、彼の吐いたセリフだけで彼の気持ちを誤認してしまっている。藤原の本心を理解するのは遠くから彼らを見ていた白滝だけ。実は ひたすらに辛いのは白滝、という事実が浮かび上がるのも巧みだ。白滝は自分とヒツジの交際が いずれ終わってしまうことを予感しながら、残された時間が少なくなっていくことのに怯えながら、全力でヒツジを振り向かせようと努めている。

三者三様に切ない場面。全てはヒツジの軽率な嘘が全員を傷つけている気がするが…。

そして2つ目はヒツジが藤原のトラウマを無意識に解放する場面。ここで上手いのは、ヒツジは藤原から1回も弟の話を聞かされていない点。彼らは中学校は別だったし、これまで弟の話題は間接的に聞いただけなのだ。ヒツジが亡き弟の件を知った風邪回(『2巻』)でも白滝から話を聞いただけ。そして文化祭で直接 聞いた『3巻』でも拒絶されただけだった。
だからヒツジは弟の件で影を背負う藤原から直接、彼の弟がどんな人で どんなことを願っていたのかを聞き出そうとする。弟=トラウマとして全てを遮断するのではなく、弟の生きた時代のことを誰かに話すことで藤原は黒く塗られた弟像に もう一度 光を当て、彼を再定義する。
それは弟の分身にも見えるヒツジにしか出来ない作業で、これによってヒツジは本書のヒロインに君臨する。

こうして2人の王子様は それぞれ本当の自分を発見し、手に入れたいもの、側にいて欲しい人のために動き出す。何事にも本気になれにイケメンを本気にさせるのもヒロインの大事な お仕事である。私には当初の魅力を失ったように見えるヒツジだが、ヒロインとしての仕事は全うしているのかな…。


れにしてもカレン視点から見ればヒツジは最低な人間なんじゃないか。藤原が好きだと思ってカレンは遠慮していたのに、実は白滝が好きと言い出し、一旦 安堵したカレン。しかしヒツジは嘘つきで、カレンの気持ちを知りつつ藤原に告白して、玉砕したから頑張れと勝手なことを言い出す。藤原に本気なのかと思ったら白滝と交際を始め、彼と藤原の前でイチャイチャし出す始末。

それでいて藤原の弟問題を解決してしまって、彼の心を掴んでしまう。だからカレンは敗戦濃厚ながら自分の気持ちに けり をつけるために藤原に告白した。その後、藤原に相応しいのはヒツジだと彼女に藤原を託すという物分かりの良い一面を見せる。カレンこそ聖女で巻き込まれがたのヒロインではないか。それにしても なぜ友情を継続できるのか。一時はヒツジを無視するぐらい彼女が抜け駆けした告白に傷ついたと言いながら、その後の藤原がいるからヒツジの呼び出しに応じたりする場面があるから、カレンも純粋な良い子には見えない。やっぱり本書は誰もが自分のために動いているだけのように見えてしまう。


味不明なゲームの罰として白滝と交際することになったヒツジ。一応、藤原がまだ好きなのに付き合おうとする自分に疑問を感じているのが救いだが。

ヒツジは自分の場所をカレンに取られたと考えているが、カレンが そう動くのも全て自分の浅はかな行動の結果である。それなのにヒツジが一方的に被害者面するのが気になる。まぁ カレンも正規の生徒会のメンバーじゃないし、ヒツジの怪我も治っているんだから、引っ込んでろよ、とは思うけど。

だいたいヒツジは藤原に少しでも自分のことで頭をいっぱいにしてもらいたいなら、ずっとずっと好きなことを態度で示さなきゃいけないのに、いかにも尻軽女な行動を取っている自分に気づかない。そもそもヒツジに泣く権利がないのに、悲劇のヒロインを演じているのが腹立たしい。


書で ずっと気持ちを諦めないのも白滝だけではないか。彼はヒツジを本気で振り向かせようと、自分の主義を変えてもヒツジとの接点を持とうとする。藤原が相変わらずヒツジと付かず離れずの距離を保とうとするので、白滝は再び牽制する。

ただヒツジが前を向くことが、白滝と付き合うことだとは全く思えない。しかし白滝に「彼女」扱いされると自尊心が満たされるヒツジ。それなのに藤原に2人でいる場面を見られると気まずい表情を浮かべる。誰に対いても失礼な女である。揺れ動く自分の心に決着をつけるため、ヒツジは生徒会を辞めると宣言する。いや、無理矢理な交際の方をやめればいいんじゃね…??と思う。


んな時、女子生徒の間で「藤原の弟」の噂が広まり、彼女たちは直接 藤原に聞きに行こうとしてしまう。それを察知したヒツジは止めに行こうとするが、間に合わず、藤原は弟のことを聞かれ、そして自分のせいで死んだと告げた。

カレンは弟の話題を禁忌にすることで藤原との関係を再び良好なものにしたかったが、ヒツジは それを健全ではないと訴える。弟は それを望んでいない、と弟に似たヒツジから言われて藤原は虚をつかれる。藤原は一方的にヒツジには分からないと切り捨てるが、ヒツジは藤原から弟の話を聞いたことがないから直接 聞くのだと引き下がらない。弟は兄が自分のことで辛い顔をしてほしいと思っているのか、とヒツジは藤原に問う。

男性キャラは強がるからトラウマは隠すが、一方で傷ついている自分を振りかざしがち。

こうして藤原がヒツジに初めて話すことで、彼は自分の封印していた過去と向き合うことになる。それはトラウマの解消で、藤原は弟のことを考えることで彼が望む生き方を発見する。
そしてヒツジの調子の外れた提案に思わず藤原は笑顔になり、彼は自分を笑顔にしてくれる人と日々を過ごすことを考え始める。それは目の前にいる、少し弟に似ているヒツジに他ならない。

藤原の思考過程が手に取るように分かる白滝は、彼が結論に達する前に、ヒツジを藤原から引き剥がす。いよいよ藤原が動き出すことを察知した白滝はヒツジの手を握り取られないように努めるのだった。


してもう一人 藤原にとってヒツジが特別だと痛感した人がいた。それがカレンである。それを知ったカレンは藤原に告白し、断られることで自分の恋心に区切りをつけたのだった。

中学時代のカレンは あらぬ噂を流され女子生徒の中で孤立しがちだった。ある日、嫌がらせを受けて孤独だったカレンを藤原が助けることで
彼はカレンのヒーローになった。その助け方がいかにも藤原らしいし、意志とは関係なく孤立してしまうカレンに藤原は きっと弟と彼女を重ねたのだろう。
それから2人は会話を重ねるようになり、カレンは いつか両想いになれる気がしていた。しかし藤原の弟が亡くなり、藤原は大切なものを持たなくなってしまった。この時カレンが藤原にかけた言葉も良くなかった。だからカレンは藤原の弟に関する一切のことを誰にも知られないように努めた。藤原が決めたことならと彼の意向に従ったのがカレンで、その性格の違いがヒツジとの立場を分けたと言えよう。

カレンの両想いの予感は希望的観測なのか、実際にそうであったのかは分からない。中学時代の藤原の行動はカレンを好きだったのか、それとも弟と同じように孤立しがちな彼女を救おうとしたのか微妙なところである。

カレンの告白は ずっと藤原を見てきたカレンが彼の心の推移を分かって、彼を諦めるための儀式のように思える。自分の藤原への気持ちが消そうとしても消せなかったように、藤原にも そういう人物がもういることをカレンは教える。
そしてカレンは生徒会から手を引く。ヒツジに自分が振られたことも伝え、ヒツジに生徒会に戻るように お願いする。それはカレンが藤原の彼女としてヒツジを推薦したということでもあった。かなりヒツジを牽制していたように見えるが、最後は変に物分かりが良くなっている。これは彼女を女性ライバルのように物語から撤退するようなことがないように、という配慮なのだろうか。


原の覚醒を見届けた白滝は これまで以上にヒツジを独占する。その距離感にヒツジはドキドキする。ヒツジは「彼氏」としたいことを白滝に要求するが、それが白滝としたいことなのかは微妙なところ。そして白滝は焦りもあってヒツジの手首にキスマークをつける。

カレンから引き継いだ生徒会の仕事をしているヒツジを藤原が目撃する。藤原に接近すると自分の心が動きかねないヒツジは彼を遠ざけようとするが、その動作でヒツジは紙の端で手首を切ってしまう。藤原はヒツジを手当てをしようとするのだが、そこの傷の周辺にキスマークを発見する。白滝の彼女として堂々としようという気持ちからヒツジは全ての事情を藤原に話してしまう。黙っていればキスマークである確証なんてないのに、ベラベラと喋りすぎる女である。藤原の嫉妬心を煽るのが目的なんだろうけど、ヒツジが色々と軽薄な女に見えてしまう。

キスマークの由来を知った藤原は絆創膏で それを隠す。そして藤原はヒツジに生徒会に戻るように言い、自分の気持ちに正直に動き出す。


原への接近をしないようにしていたヒツジだが、修学旅行を前に生徒会が大量の仕事を抱えていることを知る。藤原のカムバック要請も単純な労働力だと考え、ヒツジは生徒会に戻る。色々と理由をつけているが、これまで以上にヒツジは生徒会の姫ポジションとして戻って来ただけの話である。

そんな時、藤原は白滝を呼び出し、自分の気持ちを正直に話す。自分のヒツジへの気持ちは不明確だが、答えが出るまで側にいようと思う、というのが藤原の考え。それは実質のライバル宣言。こうして完璧な三角関係が成立する。んー、ヒツジとカレンの関係性もそうだが、藤原と白滝の関係性も よく分からない。彼らの友情の深さが分からないから、何でもかんでも話すことに違和感がある。こういう部分が作者は甘い。

そこからは藤原と白滝の鍔迫り合いが始まる。でも藤原がヒツジにマフラーを巻いたのは、恋愛感情というよりも弟とヒツジを重ねているからのように見える。藤原にとって風邪は大きな病気で、それを未然に防ぐために なかば無意識でヒツジに優しくしてしまっているような気がするが。