《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

連載 継続のためなら どんな犠牲も厭わない。じゃ ヒーローを海外に左遷させましょう!

コスプレ☆アニマル(6) (デザートコミックス)
栄羽 弥(さこう わたり)
コスプレ★アニマル
第06巻評価:★★(4点)
  総合評価:★★(4点)
 

リカ、祝・成人! えっ? 20歳(はたち)で脱コスプレ!? ――元(ハジメ)にしか見せないHな願望にひたってた19歳・がけっぷち。「でも、やっぱり、イタいよね……」えーっ! リカ、コス禁しちゃうの? 元は? そしてそしてアラタが反撃――!?

簡潔完結感想文

  • マンネリな三角関係を打破するための新方策がいっぱい。新年、新年度、新入学、ヒーロー追放!
  • お酒は20歳になってから、コスプレは20歳になるまで⁉ よく分からない悩みもコスプレが万時解決。
  • 三角関係が停滞してるなら四角関係にすればいい⁉ 逆転の発想で新章開幕という名の終わりの始まり。

直した三角関係を継続させつつ、リセットさせる環境を一変させる 6巻。

『6巻』では何もかもが一新されます。

例えば、暦(こよみ)。
1話目は大晦日からの年越しの場面。
主人公の リカが恋人の元(はじめ)と出会った
最初の1年が終わり、2年目の始まりとなります。

そして新年度を迎えるにあたって リカがリセットするのは学びの環境。
これまで短大の2年生として教師を目指し
教育実習を(なぜか短大では免許の取れないはずの)高校で行ってきたが、
より高い知識を学ぶために4年制大学への編入を試みる。

これは高校の教員免許を正当に取得させるという作者の意図でしょうか。

いや、十中八九 モラトリアムですね…。

あと3か月で社会に出て、高校生の元と生活時間が合わなくなってしまうより、
「教師になるための勉強 もっと したい」と言いつつ、
いつ勉強してんだか分からない自由時間を謳歌させるための方策でしょうね。

晦日に 実家で進路変更を父親に伝えるはずの リカでしたが、
娘に戻ってきて欲しい願望もあって、父親から反対されると、リカ は家出。

サプライズでリカの実家に来た元に説得されて
父親ともう一度 向かい合いお願いすると許されて めでたしめでたし、となる。

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沸点の低い似た者同士の親子の喧嘩。最年少17歳の少年がいなければ、どうなってたことやら。

予定調和の話ではあるが、最初の衝突が意味が分からない部分が。

父親も娘を手元に置きたい願望があるんだろうけど、
いきなり水を浴びせて、娘の話に聞く耳を持たない展開が強引かな。

年下の彼氏に説得された娘が頭を下げたら意見を180°変えるし。

これは祖母が用意してくれた着物(コスプレ)の効果、という一面を見せたかったんだろうけど、
朝令暮改の典型的なオヤジで、筋が通らなくなってしまった。


そして一方、リカも彼女の幼稚性が前面に出ている。

リカが現在どういう金銭の支援を受けているのか知らないが、
4年制大学への編入は実家の家計に負担がかかる問題なのに、喧嘩して家出。

「決意の半分は 今の部屋から離れたくないから かもしれない」と、
不純な動機を認めているのに、父の反対で(確かに仕打ちが酷いが)恋愛問題すらも放り出していく。

コスプレは世界を救う、を展開したいんだろうけど、
全てリカの恋愛問題に絡んだことなのでバリエーションに乏しい。

やっぱり、ここは『2巻』で訴えた水戸黄門的な全国行脚で、
全国各地の困っている人を助ける展開の方が、話に幅が出たのではないか。


2話目では家庭環境が一変。

新たな命、新たな家族が増える新年となりました。

この回も、2人の恋愛の悩みにコスプレを交えているけど、
ハッキリ言って蛇足というか、意味が不明というか…。

苦心の跡は見えるけど、キャラを崩壊させてまで(特にアラタ)
小芝居をすることはないんじゃないか。

子供や家族がテーマなのは分かるが。


3話目は リカの成人式。
これは未成年から成人への不可逆なメタモルフォーゼでしょうか。

これも リカの葛藤が意味が不明でしたね。
リカにとっての成人は、コスプレが許されるか許されないかの違いなんでしょうか。

内容が進まないことをコスプレの手数で誤魔化しているようにしか感じられません。
作者も本書もコスプレの呪いに掛かってしまったようです。

振袖という一世一代のコスプレを脱いで、
次々にコスプレしてしまうのは ちょっと 勿体ない気がした。

『1巻』の1話目と同じ悩みを繰り返して、
同じように彼氏が全てを許容するという再放送が始まりました。

本書もこれまでか、と見切りをつけたところ、次の話で驚きのリセット機能がっ!


4話目は新年度となって、リカが4年生大学に編入した春。

学校に入学するという新環境は、少女漫画にとっては新たな出会いと恋の始まり。

早速、新しいイケメンが登場し、リカと交流を始める。

…のは いいのだが、全然ドキドキしません。
顔の区別のつかない人がまた一人増えたなぁ、面倒臭いなぁ、という印象です。

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オーナーでも カフェの店員でも 元でも ありません。既視感たっぷりの新キャラです。

ただでさえ三角関係なんだから、これ以上ややこしくしないでよねッ!と思っていたら、

ビックリ。
ヒーロー・元のリストラである。
リストラというか左遷か。

恋愛が袋小路に入って、連載として身動きが取れなくなった本書に、
作者は禁断の一手を打ちました。

リカの悩みを何でも解決しちゃう年下のヒーローが邪魔ならば、
彼を物語から排除すれば、一層、恋模様が複雑になるとでも思ったのでしょうか。

これによって連載の延命は可能になったかもしれない。
だが、これによって私の評価が底まで落ちたことも確かである。

哀れな元と、その父。
彼らは物語の犠牲になったのだ。

ここからはファンなら楽しめる内容だろう。ファンなら。

女「気持ちには応えられないよ」男「責任とれよ」 駄目だ こいつ、話が通じねー。

コスプレ☆アニマル(5) (デザートコミックス)
栄羽 弥(さこう わたり)
コスプレ★アニマル
第05巻評価:★★(4点)
  総合評価:★★(4点)
 

対決!?リカをめぐるイケメン2人の想いはヒートアップ!!世にいうこれが「モテ期」なんだろうか。……なんて、ひたれない!元(ハジメ)もアラタも、一歩も引く気がないみたい。あたしの気持ち無視して、勝手に三角関係始めないでよー!! リカ、大混乱の第5巻!!●ナゾに包まれたオーナーの誕生秘話を描きおろし!

簡潔完結感想文

  • 結論を認めない限り三角関係は続く。前巻と変わらない内容もファンなら楽しめるのではないか。
  • 父子家庭、再婚、死別、段々と明らかになる家庭の事情。そして明らかになる『1巻』の再放送。
  • 結末まで見えている漫画で恋愛指南をされても困る。三角関係も漫画も諦めが肝心、なのでは?

正面から断ってもイケメンが私を好きなことを止めない件について、の 5巻。

自分は彼氏一筋とキッパリと言い放っても、相手が諦めない限り、
三角関係は継続するみたいです。

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諦めることを諦めない。ネバーギブアップ で ネバーエンディングストーリーだよ☆

女性が年下の男性2人から(しかも現役男子高生)言い寄られる
夢のようなシチュエーションに加えて、
その男性同士は親友であり家族も同然なブロマンス的な関係性を見せる。

この構図をハッキリと明示するのが、この『5巻』の役割か。

それとも、ダラダラと結論を出さずに(出ているが)
続けることにしたことを表明したのが『5巻』か。

色々とファンサービスを過剰なぐらいしているが、
長編作品として面白いかと言われたら、肯定できない。

三角関係は既に出涸らしの域に突入していて、
新たな(アラタな)旨味は出てこない。

作者はそれを水分がなくなるまで煮詰めると決めたのだろう。

だって、『5巻』では女性のライバルが現れたけど、
結局、彼氏の元(はじめ)が彼女の リカ を肯定する展開になるだけだもの。

1話にして肉体関係を持ち、
コスプレ趣味の自分の全てを肯定してくれて、
今回、親に挨拶に行った関係が、
今後 壊れるようなことは絶対に断言できるのに、まだまだ続く この漫画。

特に少女漫画における親への挨拶は結婚の前振りなのに…。

あとがきによると、4巻で100万部を突破したらしい この漫画。
もう編集部側が売上か人気の低迷で作者に肩を叩かない限り、
内容に関わらず続けらる体制なんでしょうね。


雑な家庭環境を持ち出して、漫画に奥行きを出そうとするのは少女漫画家の常習手段。

本書でも主要登場人物たちは家庭に問題を抱えている。

リカ は両親が離婚。
父子家庭ではあるが、高校は母の家から通い、現在は1人暮らし。
そして今回、父親の交際相手が登場して、初対面を果たしている。

元は母親と死別、パイロットの父親は留守がちで実質1人暮らしのようなもの。
だからこそ、リカと四六時中イチャイチャできる。
彼の家庭の話は、また次巻。なかなかに酷い話になります…。

アラタの家庭は医者一家。
医者になることを保留していた兄が5年ぶりに帰国。
アラタも一家が暮らすマンションとは違う別邸で1人暮らし状態。

家でイチャつこうが、旅行に行こうが問題ないのは彼らの自由が保障されているから。
複雑な家庭の事情だけど、皆さん自由時間とお金には困っていない。

『1巻』に同時収録されていた読切短編でも父子家庭や再婚話がありましたが、
作者は、家族の欠落について何か思うところがあるのでしょうか。

そして、後半の内容は『1巻』の読切短編の内容でもある。
連載は続けたいが、ネタがないという作者の実情が垣間見られる…。


画としては恋愛指南書みたいになってるのも不満だ。
作者はそういう本が好きなんだろうなぁ、という感じですが。
私が興味があるのは少女漫画で会って、恋愛指南ではないので苦痛に感じる。

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ある程度の年齢になると人って語りたがるよね。ゲイのオーナーも父の恋人も作者も…。

そして女の子は~、男の子は~、と本書を通して一般論を語っていることに違和感がある。

そういうことを描きたいのなら『1巻』のようにオムニバス形式にして、
様々なカップルの様々な事情を描けばいい。

リカと元から離れずに、恋愛の奥深さを語るのは無理があるだろう。


そういえば、収録2話目の元の誕生日回の結末はどういう意味なんでしょうか。

元は自分がムラムラした学校の図書館で リカ と事に及ぶのが夢だったのでしょうか。
これまで性描写は多かったけれど、公共の場所などでは致さなかった2人。

でも今回、不法侵入に図書館での性行為と、これまでとはテイストの違うことをしている。
それが元の誕生日だったから何か意味があるのかと思いきや、特に読み取れず。

意味のない発情漫画ではない健全さがあると思っていただけに ちょっと残念な描写だった。


あと、ちょっとずつ男性陣の下半身の描写(というと語弊があるが)が雑になっている気がする。

パンツスタイルの脚が長すぎたり、裾が太過ぎたり(ダボダボ)、
流して描いているような部分が気になった。

いつもは丁寧だからこそ、かえって気になる。